――壮絶な体験ですね……。そこから介護・福祉の仕事に出会ったのはどんな経緯だったのでしょうか?
丹羽 たまたま誘われたボランティアで福祉の現場へ行く機会があり、そこで介護の仕事を知りました。
金銭トラブルで苦労したので、お金のやり取りが怖かったんですけど、そうしたドロドロした世界から離れていて多くの人から感謝される。そこにすごく安心感がありました。
――ビジョナリーは順調に事業を拡大されましたが、人材の獲得には苦労されたそうですね。
丹羽 この業界はずっと人手不足で、募集をかけても反響がないのは昔から変わりません。
求人サイトで一番大きい広告を出しても問い合わせすらゼロでしたから、友達に声をかけまくるしかなくて、年間で1~2人採用できれば良い、そんなレベルでしたね。人材を確保しないと事業を拡大できないので、どうすれば注目してもらえるかと考え続けた結果、生まれたのが実業団の構想でした。
野球でもサッカーでもなく「マッチョ」の実業団を作ったワケ
――人材確保のために実業団、というのはなかなかユニークですよね。
丹羽 若い人たちが介護の仕事に触れるきっかけをつくりたかったんです。自身の経験も影響していて、僕も最初の仕事に美容師を選んだ理由は、美容師の仕事が好き! というよりもただ「かっこいい」から。仕事内容ではありませんでした。そこで「やりたいこと」より、もっと他の要素で訴求することが大事だと考えたんです。
実際に若者を対象にアンケート調査してみると、8割が「やりたいことは特にないけど、人間関係が良く、同世代が多い楽しそうな職場で働きたい」と答えていました。
それに、介護の仕事は実際に触れてもらえれば、ネガティブなイメージを持つ人も多い分「想像していたより、いい仕事だね」と思ってもらえるはずだと。でも「介護の仕事いいよ」とか「介護の仕事やらない?」と言ったところで、「興味ないからいいよ」と突っぱねられてしまいます。だから、別のところで自然に触れてもらう導線を作りたかった。
――とはいえ、実業団といえば野球や陸上競技など、スポーツ競技のイメージが強いように感じます。なぜボディビルを?
丹羽 最初はサッカーや格闘技の実業団を考えましたが、サッカーは抱える人数が多く、練習場の確保や用具の準備など費用もかかる。格闘技は自分が好きだったのですが、介護業界ということもあって、バイオレントなイメージもあって、マッチしないなと。
じゃあどうするかと考えた時に、僕自身が筋トレをしていたので「マッチョの実業団は聞いたことないけど、おもしろいな」と思ったんです。練習場はジムだし、金銭的なハードルも低い。個人競技だから大会の日に仕事現場を離れる人数も少なくて済みます。
