なぜ「踏切改革」は停滞してしまったのか
立体交差以外の対策が尽くされたからだ。ところが立体交差が進まない。踏切道はその名の通り「道路」だから、道路管理者の国、都道府県、区市町村が事業主体になる。国が費用の一部を補助するとも定められたけれども、それぞれ限られた自治体予算の中で、踏切解消は後回しになりやすい。解消に向けた協議さえ行われていない踏切もある。
そこで平成28(2016)年に踏切道改良促進法を改正し、国土交通大臣が危険な踏切道や渋滞の原因となる踏切道を指定し、道路管理者、鉄道事業者、地域の関係者が連携して、具体的な対策を検討する仕組みとなった。立体交差化等だけでなく、迂回路や跨線橋の設置、踏切歩道部分の拡幅、駅の改札口の追加、駅を横断する自由通路の設置など、必要に応じて当面の対策等も検討する。
改良すべき踏切道は平成28(2016)年に58カ所が指定されて以降、順次追加されている。令和7(2025)年1月の指定で、総数は1946カ所になった。国土交通省によって、指定された踏切は順次公開されている。放置したままだと「道路管理者はなにをしているのか」「鉄道事業者と連携できているか」と批判されることになるだろう。
国土交通省によると、ピーク時遮断時間が40分以上の開かずの踏切は、令和3(2021)年9月末時点で全国に500以上存在する。このほかに、自動車交通量×踏切遮断時間(分)が5万ポイント以上の踏切を「自動車ボトルネック踏切」、歩行者と自転車の1日あたりの交通量×踏切遮断時間(分)が2万ポイント以上の踏切は「歩行者ボトルネック踏切」という。2つの「ボトルネック踏切」はこれまた全国に500以上あるという。
さらに、踏切内の歩道の幅が狭い「歩道が狭隘な踏切」、通学路の「通学路要対策踏切」、過去5年間で2回以上の事故が発生した「事故多発踏切」、高齢者、障害者等の移動の円滑化の促進に関する法律で指定された道路が交差する「移動等円滑化要対策踏切」がある。これらの踏切は国土交通省にとって「緊急に対策の検討が必要な踏切道(カルテ踏切)」となっている。



