「開かずの踏切」根本対策は……?

 開かずの踏切の根本的な解消策は、立体交差か廃止しかない。踏切は生活道路の延長だけに、廃止されると周辺の利用者が困る。現実的には立体交差か、列車の運行本数を減らすか、という選択になる。立体交差は予算が付けば着手できるわけではない。踏切周辺の用地買収が必要になるため、地権者との交渉に時間がかかる。

 鉄道を高架化する場合は、原則として側道の整備も求められる。工事中の仮線用の土地であると同時に、高架完成後に線路で火災が発生した場合に消防車が通行できるようにするためでもある。

 例外としては、昭和51(1976)年に京浜急行電鉄の北品川~青物横丁間で実施された直上高架方式がある。使用中の線路の真上に高架線路を設置し、仮線を設置しなかった。都心では仮線用の用地が取得しづらく、日照権の問題があるため、地下化も選択肢になるだろう。工事コストは増えるけれども、地下化に合わせて地下鉄へ直通できる利点もある。

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 西武鉄道はかつて、新宿線の上石神井駅~西武新宿駅間の地下に急行線を建設し複々線化する計画があった。主な目的は輸送力増強であったけれども、優等列車の大半を地下線経由とすれば、既存の地上線の運行本数が減り、高田馬場駅付近の踏切遮断時間を短縮できるという期待もあった。しかし、この計画は廃止となってしまった。

 連続立体交差工事は道路改良工事となるため、事業主体は自治体であり、鉄道事業者の負担はない。ただし、立体交差によって駅が広く便利になるとか、列車を高速化できるなどの付加価値が生まれる場合は、その利得分が鉄道事業者の負担になる。東武鉄道や小田急電鉄は連続立体交差のときに複々線化も実施したけれども、この複々線化については鉄道事業者の負担となっている。

 国土交通大臣が指定した踏切は何らかの対策と計画が求められている。開かずの踏切の解消に向けて、自治体と鉄道事業者がどのような判断をするか、指定踏切の一覧および設置自治体の公式サイトを見比べてみると、対策の進捗がわかる。そして意外にも(?)、対策が公開されていない踏切が多い。もっとも簡単な解決方法は閉鎖だ。しかし地域の利便性は下がり反対は必至。開かずの踏切の解消はまだまだ時間がかかりそうだ。

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