自宅での看護・介護は24時間体制で
駒込病院の山田看護師とケアマネの高梨さんは連絡を取り合って、保雄の看護・介護にかかわるスタッフはすべて24時間対応の事業所を頼んでくれていた。この希望を叶えることが難しかったのだと知ったのは、ずいぶん後になってからだ。
私たちが住むマンションには車椅子対応のエレベーターはあるものの、エントランスは10段ほど階段を上がらなくてはならない。そこでは人海戦術で車椅子を抱えあげ、5階の我が家まで比較的スムーズに移動できた。玄関を開けて中に入ると、保雄はゆっくりため息をついた。
入ってすぐのリビングの真ん中にセッティングされている介護ベッドに、スタッフが保雄を静かに横たえる。彼は上半身を少し起こした状態にしてもらい、部屋の中を見回している。外がよく見えるよう、まわりには視界を遮るものは何もない。さすがに疲れたらしく、顔色は悪く息も上がっていた。それでも、少し落ち着くともう一度大きなため息をついた。「やっと戻ってこられた」とつぶやいたのを、そこにいた全員が聞いた。
誰もが「お疲れさま」「もう大丈夫だよ」と声をかける。青空が目の前に広がる良いお天気の日で本当によかった。担当してもらう訪問看護ステーションの看護師3人が、すぐにバイタルチェックを始めた。私は、とにかく生きてこの部屋に戻ってきてくれたことが嬉しくて、彼の手を取って「よかったね、よかったね」と繰り返すことしかできない。彼もいちいち、「うん、うん」と応えてくれる。ふたりで力を合わせて買ったこの家に保雄は帰宅できたのだ。
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