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現代の医学は「論より証拠」

 このランダム化比較試験は、薬や治療法の効果を検証するのに採り入れられており、臨床試験の中では科学的信頼性がもっとも高いとされている。β-カロテンやビタミンEの効果もこの方法によって検証され、否定された。理屈ではがん予防になると考えられても、現代の医学では臨床試験で効果を実証できなければ認められない。まさに「論より証拠」が大切なのだ。

 ランダム化比較試験は、結果を歪めるバイアスを最小限にできる理想的な検証方法と言える。だが、たくさんの被験者を集めて、一方の人たちに肉を断つよう強制するのはほぼ不可能だ。そこで、食事や運動といった生活習慣と、がん、心臓病、脳卒中などの病気や寿命との関係を調べるのに、別の研究方法が採用されてきた。それが「コホート研究」と呼ばれるものだ。

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 コホートとは、「年齢や居住地など、ある一定の特定の条件を満たす特定の集団」のことを指す。具体的には、何万人もの地域住民を対象に生活習慣を調べて何年間も追跡し、その後、どのような生活習慣を持つ人がどんな病気になりやすく、どのような人が長生きするかを分析する方法だ。

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 日本でも、様々な研究グループによって、いくつものコホート研究が実施されている。その代表的なものの一つが、全国11の保健所と、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、大学、研究機関、医療機関が共同で運営している「多目的コホート研究(JPHCスタディ)」だ。全国各地の地域住民約14万人を対象に実施されており、その研究成果は随時ホームページにアップされている。

 この多目的コホート研究で、肉のリスクがどのように評価されているかを見てみよう。このサイトの「現在までの成果」のページにある「フリーワード検索」に「肉」と入れると、検索結果が33件出てくる。その中に、「赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」という項目があるはずだ。そのページを開くと、「肉類の摂取は結腸がんのリスクを上げる」と書かれた見出しが目に飛び込んでくる。