大腸がんを心配するほどは肉を食べていない
この結論は次のような分析結果に基づいている。がんや循環器疾患の既往のない45歳から74歳の男女約8万人を、肉類や赤肉・加工肉の一日当たりの摂取量を少ない順に5群に分け、8年または11年後に生じた大腸がん(結腸がんと直腸がん)の発生率を比較した。その結果、最も量が少ない群に比べ、赤肉の摂取量が多い群で女性の結腸がんのリスクが1.48倍となり、肉類全体の摂取量が多い群で男性の結腸がんリスクが1.44倍になっていた。
これだけを見ると、やはり肉類を摂るのは控えるべきだと思うかもしれない。だが、問題は量だ。明らかにリスクが高まったグループは、一日平均で女性が赤肉80グラム以上、男性が肉類全体を100グラム以上食べていた。日本人の肉類の摂取量は平均83グラムで、赤肉の摂取量に限ると一日平均で50グラムだ。つまり、多くの人は、大腸がんを心配するほどは肉を食べていないことがわかる。
ただし、注意も必要だ。現在の10代後半の若者は、肉類全体を一日平均で130グラムも摂取しているそうだ。若いときの調子で肉類を食べ続けていると、大腸がんになりやすくなる。実際に現在、日本人の大腸がんは増えており、女性では死因トップだ。がん予防のために肉を断つまでの必要はないが、食べ過ぎには注意が必要なのだ。
このように、がん予防の情報を見極めるには、どのような研究に基づいているかを確かめればいい。だれかの体験談や言い伝えを頭から否定する必要はないが、科学的に見極める目を持っていれば、間違った予防法に惑わされずに済むはずだ。多目的コホート研究では、他にも様々な研究結果が報告されており、それらと国内の複数の研究結果に基づき、具体的ながん予防法が提唱されている。