華々しい芸能界で活躍していたはずの彼女をドン底へ落としたのは、信頼していた占い師の「姉さん」だった――。現在はタレント活動を続けながら、芸能事務所も代表を務める小阪さんが、自身の“洗脳”体験について綴った『六本木洗脳』(晶文社)より一部を抜粋してお届けする。
「姉さん」からの心理的な支配の下、なんとか前を向こうと保育園で働き始めた小阪さん。しかし、少しずつ抵抗の兆しを見せ始めた彼女に対して「姉さん」が良い顔をするはずもなかった……。(全4回の3回目/続きを読む)
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2011年11月某日 外界との接触と洗脳のほころび
保育園で働くようになると、増えた体重を維持できなくなった。単純に生活が規則正しくなったことが大きかったと思うが、やはり外界との接続は、それまで姉さんによってつくられた洗脳という殻に少しずつヒビがはいっていく。
他の人と関わるようになったことで、私は自分がされていることはおかしいんじゃないか、と疑問を抱き始めた。シンプルに、「なんで私は孤立しなきゃいけなったのか」とか、「なんで食べることが苦痛になってきたんだっけ?」とか。
そうした小さな気づきは、少しずつ、でも確実に殻のヒビを広げた。卵の殻にヒビが入り、ちりちりと亀裂が枝分かれしていくように。闇の勢力・小阪由佳Bに虐げられていた小阪由佳Aが、おぼろげながらも息を吹き返し始めていた。
同時に、姉さんにも少しずつ“意見をする”ようになった。それまで姉さんの指示には絶対服従だったのが、厳しそうだと思ったら「それはできないかもしれません」とためらいを見せ始めた、「太れ」という命令にも、「あとどれぐらい太れば良いんですか」と恐る恐る聞いたら、姉さんは「マツコ・デラックスくらいまではいかないと」と適当なこと言う。
マツコさんの外見だけに注目した浅はかさに私は一気に落胆した。
これがきっかけに「これ以上太れないです、すいません、ごめんなさい」ときっぱりと言えるようになった。
