2009年、グラビアアイドル・小阪由佳さんが突然の引退を表明した。その後、開設したブログでは常軌を逸した投稿を繰り返し、2010年に開催したライブではマスコミの前に“激太り姿”で現れる。華々しい芸能界で活躍していたはずの彼女をドン底へ落としたのは、信頼していた占い師の「姉さん」だった――。
現在はタレント活動を続けながら、芸能事務所も代表を務める小阪さんが、自身の“洗脳”体験について綴った『六本木洗脳』(晶文社)より一部を抜粋してお届けする。「姉さん」の精神的な支配から何とか抜け出し、保育園で働きながら新しい人生の第一歩を踏み出した小阪さん。しかし“洗脳”の後遺症は彼女を苦しめ続けた……。(全4回の4回目/最初から読む)
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2012年1月 再出発
人生は選択の連続とはよくいうけれど、その選択の意思決定に大きく関わるのは、過去の経験や知識と周囲の環境だ。洗脳されていた自分が正気を取り戻し始めたからといって、すぐに何かができるわけではない。
保育園で働くために、何社も何社も面接を申し込んだ。私のやる気とは裏腹に、本名で芸能活動をしていたことがアダとなって行く先々で不採用となる。名前を検索したら心配になるような素行しか出てこないのだから、ごもっともだ。ならばと芸能歴を伏せたら採用されたが、その後結局バレてしまい「ファンやマスコミが来たら厄介」との理由でクビになってしまった。
スキャンダルの弊害。新しい世界へと意気込んでいただけに、かなりへこんだ。私はあまりにも世間知らずだった。
他の人に迷惑をかけるわけにはいかない。それでも、保育の仕事をしたいという想いは変わらない。粘り強くいくつもの保育園の門を叩き、自分の来歴も包み隠さず説明して、ようやく拾ってくれる保育園に出会った。面接に落ち続け、自分の人生が否定されるような気持ちになるのは悲しかったけれど、自分の足で自分の道を歩いているという実感があったし、生きる理由に“保育園で働く”という夢を叶えることを掲げた以上、絶対に諦めるわけにはいかなかった。
なんとか採用され、保育園で仕事をするようになってから体重は3ヶ月で10kg減り、60kg台になっていた。生活を戻せば体重も多少戻るんだなとは思ったが、残りの10キロは全然落ちないし、脳は洗脳によるダメージで蝕まれていた。
ただ、傷ついた体は、修復できるかもしれない。元通りとはいかずとも、何らか修復する方法が模索できる。もしくは、修復できないものはできないというジャッジがハッキリしている。でも脳と心は、壊れた時の治し方がわからない。治るかどうかも霧の中だ。

