俳優の石田えりがきょう11月9日、65歳の誕生日を迎えた。17歳で俳優デビューし、32歳で出したヘアヌード写真集が30万部のベストセラーに。それと前後して、転機となる出来事が……。(全2回の2回目/はじめから読む)
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石田えりがヘルムート・ニュートンの撮影で写真集『罪―immorale―』を出した1993年前後は、大手芸能事務所から離籍したり、1988年の第1作以来出演を続けていた国民的映画シリーズ『釣りバカ日誌』を7作目にして自らの意思で降板したり(1994年)と、彼女にとって転機となる出来事が集中した。
『釣りバカ日誌』で西田敏行の妻を好演するも…
『釣りバカ日誌』では、主人公の「ハマちゃん」こと浜崎伝助の妻・みち子の役だった。シリーズ前半で監督を務めた栗山富夫によれば、同役に石田が選ばれたのは、ハマちゃん演じる西田敏行と、その釣りの相棒である「スーさん」役の三國連太郎という老獪な二人の相手役には、“パワーのある姉ちゃん”でないと飲み込まれてしまうと製作側が懸念したからだという(「監名会リポート 第133回 『釣りバカ日誌』」、「日本映画映像文化振興センター」ウェブサイト2017年8月26日配信)。石田はその期待に応えてパワフルで頼もしい妻を好演し、映画も人気シリーズとなったが、公私を通じてつらいことが続いて精神的に追い詰められ、《シリーズの途中くらいから照明などの待ち時間を永遠のように感じるようになってしまっ》たという(『てんとう虫』2012年6月号)。
夫役の西田敏行とは初共演だった第1作から黙っていてもツーカーな感じで、自然とみち子という役になれた気がしたうえ、その役柄も大好きだったが、異常なまでに疲れてしまって降板するしかなかったらしい。これについて後年、石田と対談した劇作家の渡辺えり(当時・えり子)が《同じようなパターンでこなしていくようなことはできないんだろうな、心が動かないと演技ができない人なんだなと思った》と感想を述べているように(『せりふの時代』2004年秋号)、石田は本質的に、決まったポジションに安住していられない性格なのかもしれない。


