秋葉原はすごく特殊な空気の場所

――現在、メイドカフェの定番になっている「萌え萌えきゅん」などの言葉とともにオムライスなど食事に愛情を注ぐ「愛込め」はあっとほぉーむカフェのhitomiさんが作ったんですよね。リエさんが入ったときにはもう完成されていたんですか。

リエ やっているメイドもいました。でもスタイルはそれぞれでしたね。萌え萌えきゅんという言葉も全員が言ってはいなかったです。

――そうしたメイド特有のスタイルはオタク趣味のない「バンギャ」だったリエさんにとっては抵抗感もあったんじゃないですか。

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リエ 抵抗というか「どういう世界??」という戸惑いがあって、慣れるまで時間がかかりました。正直やめようかなと思うタイミングもあったんですけど、徐々に気持ちの切り替えができるようになってきました。

 やっぱり秋葉原という土地ってすごく特殊な空気の場所なんです。降り立った瞬間に私にとっては非日常の空間で。あっとほぉーむカフェのお屋敷(店舗)はなおさらテーマパークのようなイメージだったので、もうそこに入るとすごく切り替えができました。パラレルワールドじゃないですけれど。

©︎平松市聖/文藝春秋

――リエさんは、「萌え」というイメージでお給仕する感じでもなさそうですよね。

リエ でも、意外とそこはちゃんとしているんですよ。お屋敷の中では100%、120%くらいの感じでやってます(笑)。楽しんでもらいたいなという気持ちがベースにあったので、お出迎えしたり、愛込めしたり、チェキにお絵描きしたり……メイドは自分になじんでます。

コスプレをしてご帰宅するご主人様やお嬢様も

――リエさんがメイドカフェで働くようになった2005年以降、メイドカフェは全国的にブームになります。

リエ 当時はテレビに扱ってもらったり、取材がすごく来ていましたし「なんだかすごい時代になってるな」と感じました。

 あっとほぉーむの店舗もすごい増えてました。私が入った時は秋葉原ドンキ店しかなく、お屋敷自体もスペースが小さかったんですけど、どんどん大きくなっていきましたし、お屋敷の数も増えていきました。今は東京、大阪、名古屋に12店舗あります。

――当時、印象的なお客さんはいましたか。

リエ 最初の頃はメイド服やセーラー服を着てご帰宅するご主人様(男性客)がいらっしゃったりしました。少し衝撃を受けつつも、「秋葉原はやっぱり面白い場所だな」と思いました。アキバの街にもそうした人が当たり前のように存在して、それに対して歩いている人も、驚いて写真を撮ったりには全然ならないんです。

©︎平松市聖/文藝春秋

――00年代のアキバの空気ですよね。

リエ みんなが解き放たれて、自分の好きなこと、やりたいことを楽しんでましたね。秋葉原で知らない世界を知れたというか、こういう人たちがいるんだなと自分の価値観が広がっていきました。固定概念がなくなっていった期間だったかなと思います。