1日1.5食…飢えや栄養失調で亡くなる人々も

 食料不足も深刻だ。国連は2025年8月、ガザ市で飢饉が発生していると発表した。9月のデータによると、栄養失調率は約28%に達し、2年間で460人が飢えや栄養失調で死亡。そのうち150人以上が子どもだった。

「停戦前は食べられても1日1食。現在でも1日1.5食という状態です。小麦粉でパンを作って食べるのが主食ですが、それすら食べられない。食料が搬入されても高額で取引され、収入源を失った家族は購入できない。タンパク質は摂れず、肉や卵は1年以上食べていない子どもたちばかりです。野菜も、1個のトマトを8人でシェアする状況でした。レンズ豆の缶詰を食べ続けて、体調を崩すケースもあります」

ガザ中部ヌセイラトの難民キャンプで、食料を受け取るため容器を持って待つ子どもたち ©AFP=時事

 停戦後は少しずつ食料が入るようになり、スープの具材が増えたり配給できる食事の数が増えたりした。しかし肉は1キロで3000円、卵1個が250円という状況で、食べ盛りの子どもたちが十分に食べられない状態は続いている。サラさんは「ずっと食べたくてしょうがない鶏肉やリンゴ、バナナをなかなか食べることができません」と話し、ナディアさんも「肉も果物も高くてなかなか買えません」と、実情を訴える。

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子どもたちに起きた異変の数々

 ガザのすべての子どもたちがケアを必要としている。親から片時も離れられなくなったり、おもらしをするようになったりする。ストレスから暴力的になる子どももいる。何も言わなくなり心を閉ざしてしまうケースも多い。

「恐怖で喋れなくなる子どももいます。夜泣きもすごくて、夜中に突然起きて泣き叫ぶことも頻繁にあります。でもそれがもう日常なので、親もどう対応していいか分からない状態です」

 空爆によって家族とバラバラになったり、瓦礫の下で家族が死んでいく様子を目撃したりした子どもたちには、専門的なケアが必要だという。

瓦礫からまだ使えるおもちゃを探して拾う子どもたち(写真=鈴木氏提供)

 極限状態で、市民同士の物資の略奪も続いたなかで、それでも助け合いの精神が見られることもある。

「停戦以降、ガザの中南部から北部に帰還した人、あるいは北部に戻ったものの、あまりの破壊で生活ができないと、再び中南部に戻ってくる人もいました。そのような人々に、わずかな食べ物や衣類を配る方もいます。避難先の人々が食べ物を持ち寄り、自らも被災していながら、さらに状態のよくない方に配るという光景も見られます」