いじめ、性の問題行動、SNSでの誹謗中傷、暴力、自傷。今や子どもは、加害者にも被害者にもなり得る時代。しかも、その「きっかけ」や「背景」は、大人が思う以上に複雑に、かつ見えにくくなっている。なぜ子どもによる加害が起こるのか。被害はどのように拡大していってしまうのか。
ここでは、教育現場を長年取材してきた石井光太氏の著書『傷つけ合う子どもたち 大人の知らない、加害と被害』(CEメディアハウス)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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子どもたちの恋愛トラブルのひとつ“デートDV”
子どもたちの恋愛トラブルは、当人たちが交際していると認識しているカップルの間でも起きています。その1つが、恋人に対するDVです。“デートDV”と呼ばれる行為です。
デートDVと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。一般的には、男の子が女の子の恋人に手を上げるような光景かもしれません。しかし、その概念はもう少し広く、特に10代の子たちの間では、次のような行為が目立ちます。
・ネット上での攻撃 SNSなどで相手を罵倒したり、嫌がらせをしたりする。
・束縛 自分以外の異性との会話を禁じたり、友達と遊ぶのを妨害したりする。
・監視 位置情報共有アプリなどによって相手の行動を逐一監視する。
・金銭の搾取 相手に金銭を要求したり、デート代を支払わなかったりする。
・脅し 「別れるなら死ぬ」などと言ってリストカットなどをして脅す。
・性加害 交際していることを理由に、相手の嫌がる性行為を無理強いする。
このように見ていくと、意外にデートDVが広い範囲を示していることがわかるのではないでしょうか。
コミュニケーションツールがネットに移行している
若いカップルの間でこうしたDVが起こっている要因として、コミュニケーション力の脆弱さが関係しているという声が少なくありません。
現代特有の要因は、コミュニケーションツールがネットに移行していることです。前章で、今の子どもたちの中にはネットで完結する恋愛をしている子がいると紹介しましたが、対面で会っているカップルの中にも、意思の疎通をSNSなどで済ませている子が非常に多いのです。
親世代の人たちにあまり馴染みのないものを挙げれば、“オンライン・デート”があります。
