──その後は通信制高校に入学したそうですね。

川口 準備教室の社会科の授業が、すごくユーモアがあって面白かったんです。先生が何を聞いても的確に答えてくれる方で「私も社会科の教員免許を取りたい」と思ったんですよね。

 夜間中学と高校は並行して通えるので、今はこの4月に開校した県立夜間中学と通信制高校に在籍しています。高校は来年卒業予定です。

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川口さんが使用していた社会科の教科書(本人提供)

──夜間中学の入学式では新入生代表として挨拶し、さまざまなメディアで報道されました。

川口 学校の性質的に、本名も顔出しもOKという生徒は珍しいようで、さまざまなメディアに出してもらいました。「29歳で初めての中学生活」と報道されたことで、履歴書を偽って書いたことは会社の人に知られましたが、不問にしてくれました。それには感謝しかないです。

 今の夜間中学は県立高校の敷地内にあるので、校舎に入る前から「学校」という雰囲気があります。私は学校への憧れが強いので、自分も「生徒」なんだと実感できてうれしいですね。

「教員なめるな」「あなたに勉強を教わりたくない」という批判も

──今年、川口さんがThreadsで生い立ちや「教員免許を取りたい」と明かしたところ、多くの反応が集まりました。中には「教員なめるな」「あなたに勉強を教わりたくない」という批判もありました。

川口 予想外に反響が大きくて驚きました。ただ、私は教員免許を取ったとしても、普通の学校の先生になるつもりはないんです。将来的には児童養護施設にいる子や、私と同じように学校に通えなかった子に向けた学習支援に携わりたいと思っているんですが、そのときに教員免許があったほうが信頼してもらえるかな、と。

川口さん(左下)と同級生たち(本人提供)

──「信頼」を得るには資格が必要?

川口 今の私には頼れる実家も肉親もないので、ひとりで生きていかなきゃいけません。仕事を探すとき、自分が進みたい場所の入口に立つには、まず公的な証明と経歴、つまり学歴や職歴が必要だと思うんです。そして「学歴がまったくない」人は、はじかれます。

──川口さんが言うと、重みがあります。