〈あらすじ〉
1982年。ロック歌手として名声を上げつつあったブルース・スプリングスティーン(ジェレミー・アレン・ホワイト)が故郷ニュージャージーに戻ってくる。73年のデビュー以来、これまで5枚のアルバムを発表、売り上げも好調。順調にキャリアを積み上げてきたが、その表情は複雑だ。やがて部屋の中に4トラックのみの録音機を運び込ませ、たった1人で作詞作曲を始めるも、生まれてくるのは、これまでのイメージと異なる暗くて重い曲調のものばかり。
マネージャーのジョン・ランダウ(ジェレミー・ストロング)は戸惑い、恋人のフェイ(オデッサ・ヤング)も変わってしまったブルースをなじる。誰も入り込めない彼の孤独――そこには幼い頃のつらい思い出、父ダグ(スティーヴン・グレアム)との確執があった。
〈見どころ〉
異色のアコースティックアルバム『ネブラスカ』がどんな背景から生まれ、また当時どう受け止められたのか。さらに、このアルバムには収録されなかった代表曲の誕生秘話も。音楽ファン必見。
「Born in the U.S.A.」誕生前夜のロックスターの孤独と葛藤を描く
76歳にして現役のロックスター、ブルース・スプリングスティーン。その若き頃――伝説の名盤『ネブラスカ』制作の舞台裏と知られざる素顔とは。『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)を手掛けた20世紀スタジオ製作。米国メディア大絶賛で話題の伝記映画。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆心の苦しみを全身で受け止めるスーパースターが、殺風景な場所で素手の勝負に挑んでいる。それに感応した映画作家も、肝を据えて素手の勝負に挑む。晴れた空や幸せな家庭を一切出さず、徹底してメロドラマを排した演出だ。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆作曲と録音にこだわる心情は猛烈に独特。音楽を学んでいれば興奮するかも。だがそれよりも、彼が幼い頃に父親に叩かれて躾けられた場面に震えた。この世の誰かと絶対的に繋がる力は、孤独でいる必然によって生まれたのか。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆音楽伝記映画の売れ線パターンをあえて外した渋い作品志向に好感。歌が生まれる瞬間の孤独や葛藤に潜り、創造の源泉を探ろうとする視座の深さ。この映画自体に『ネブラスカ』収録の楽曲群と同一の内省的なトーンを感じる。
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洞口依子(女優)
★★★★☆ジェレミー・アレン・ホワイトとジェレミー・ストロングの演技力の高さはしっかりと背骨に。だが他は肉付きや血流が人工的でアンバランス。アルバム『ネブラスカ』誕生にフォーカスを更に合わせた脚本でも観てみたかった。
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今月のゲスト
柳亭小痴楽(落語家)★★★★★一人のアーティスト、同時に一人の男として、今までの自分を変えることに対する恐れや孤独、葛藤、苦悩が微細に描かれていた。こんなに一曲を一小節一小節噛み締めながら聴いたことはなかった。必ず映画館でもう一度観る!
りゅうていこちらく/1988年、東京都生まれ。落語家。若手真打の一人としてメディアでも活躍中。NHKラジオ第1『小痴楽の楽屋ぞめき』(毎週日曜13:05〜)メインパーソナリティー。また著書に『令和の江戸っ子まくら集』などがある。
- 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
- おすすめできます♪★★★★☆
- 見て損はない。★★★☆☆
- 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
- うーん……。★☆☆☆☆
©2025 20th Century Studios 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』
監督・脚本:スコット・クーパー(『クレイジー・ハート』)
原作:ウォーレン・ゼインズ「Deliver Me from Nowhere」
2025年/アメリカ/120分
公開中
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/springsteen




