「英語ペラペラ」なのに「スキップは下手」という緩急
この第8週で爆笑をかっさらったのが、錦織友一を演じる吉沢である。錦織は、“大盤石”の異名を持つ松江出身の秀才で、過酷な生活に耐えかね、出奔した元夫・銀二郎(寛一郎)を追って東京にやってきたトキと出会う。その後、ヘブンの通訳として松江に戻ってきた際にトキと再会し、2人の架け橋となる役どころだ。
錦織を演じるにあたって吉沢は撮影の4カ月前から英語のレッスンに励み、正確かつ流暢な英語で“秀才設定”に説得力を与えている。
一方で、錦織は不器用なところもあり、11月19日放送の第38話では、トキに求められてスキップを披露するが、その出来は最悪だった。身体を硬直させた状態で、ロボットのように同じ側の手足を同時に動かす錦織。吉沢自身のアイデアによって、運動神経が悪い人特有の動きがリアルに再現されていた。
また、いつも島根県知事・江藤(佐野史郎)とヘブンとの間で板挟みになっている錦織は日頃の鬱憤を晴らすため、江藤にスキップを勧めるが、お手本を見せろと言われてしまう。結局、江藤の前でもド下手なスキップを披露する羽目に。吉沢の目が死んだような表情といい、絶妙な間の取り方といい、コメディセンスを感じずにいられない。
一方で、ダークな雰囲気も持ち合わせており、江藤に弱みを握られているであろう理由についても気になるところ。錦織にはモデルが存在し、史実通りであれば、これから辛い展開が待ち受けている。シリアスとコミカルの緩急が絶妙な本作で、シーンに合わせて芝居の温度感を緻密に調整する吉沢の力が、これからさらに生かされていくのではないだろうか。
泥酔騒動で芸能活動を休止していた年始から一転、『国宝』『ババンババンバンバンパイア』『ばけばけ』の3作で、改めて日本の映像界になくてはならない存在であることを証明した吉沢。日本初上陸となるブロードウェイの傑作ミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』(2026年上演)への主演も控えており、まだまだこの勢いは止まりそうにない。





