街を見ても、昔は『普通じゃない人』に会うことも多かった。けど、今の時代はもう見ない。異質なものは表に出ないように排除されている。みんなが同じ均質化されている」
外国人スタッフが多い理由
VICの店舗の大きな特徴は外国人スタッフの姿だ。現在、全スタッフの8割、およそ80名が勤務している。
人手不足の昨今、飲食店やコンビニで外国人スタッフを見るのは珍しくなくなったが、VICは20年近く前から積極的に外国人を雇用している。
「たまたま、18年前に日本語も話せないベトナム人の女性が働きたいとやってきた。通訳を入れながらなんとか雇って、そこから『ここは働きやすい』と同じ外国人の友人を連れてきて。口コミでスタッフが増えていっただけですね」
当然、国が違えば文化も違う。働くことに対する意識も日本人のそれとは大きく異なることも。
「外国人スタッフにはなかなか日本の飲食店の文化は伝わらないですね。お客さんから皿の置き方を注意された際に、謝らないどころかケンカすることもあるし。売上金を盗まれたこともね……。でも、不思議とイライラしないんですよね。してもしょうがないというか」
国籍を超えた多様性を受け入れる手塚氏には、育ってきた環境の影響がある。「典型的な団塊の世代」という同氏は1947年生まれ。戦後、徹底的に民主主義を教育されてきた世代だ。
「学校ではことあるごとに『人間はみんな同じ、平等だ』と教わってきた」
そこから国際基督教大学に進学し、そこにいた海外からの留学生との交流をきっかけに文化の違いに衝撃を受ける。「人間がみんな同じだなんて嘘だ!」と。
ハモニカ横丁は全盛期の名残
近年のトレンドワードのように扱われる「多様性」だが、ここではそれが生々しく息づいている。人間は同じじゃない、違って然るべきという手塚氏のバックグラウンドから成る懐の広さだろう。ゆえに、ハモニカ横丁では、男女、年齢、国籍さまざまなスタッフが共に働いている。