東京都心部で大規模な再開発が進んでいる。完成した施設の中には、賑わいを創出できていないところが散見される。そういった施設には何が足りないのか。飲食業界に詳しいライターの大関まなみさんが、独自視点でレポートする――。
なぜ再開発でできた飲み屋街はうまくいかないのか
ピカピカのビルの中に、新しい「横丁」が次々に生まれている。
都内のあちこちで再開発が行われ、駅前に立派なビルが建つ。その中には「横丁」もしくは「フードコート」を謳う、複数の飲食テナントの集合スペースがあることも珍しくない。複数の飲食店が並ぶ「横丁」というスタイルは、日本各地で自然発生してきた。これが今になって再注目される中、現代流の「新しいスタイルの横丁」をつくり、街を盛り上げようというものだ。
しかし、ビジネスとして意図的につくられた横丁に、人は魅力を感じるのだろうか。
実際に、そうした施設では賑わいづくりに苦戦している例も少なくない。例えば2024年に全面開業したばかりの「渋谷サクラステージ」は、ネットユーザーに「日本一新しい廃墟」と揶揄される始末。ピカピカの建物に対し空きテナントが目立ち、ほとんど人がいないのである。
近年の再開発には、時代の流れを取り入れようと「多様性」をキーワードに行う開発も多い。その産物の一つが東急歌舞伎町タワーの「ジェンダーレストイレ」だ。“性別を問わず使用できるトイレ”と話題を集めたが、防犯面などから批判が殺到。現在は改修工事が成され、従来の男女別トイレに戻ってしまった。
近年、商業コンテンツとしての街づくりは迷走している。なぜ人工的につくられた街はうまくいかないのか。住みたい街ランキング常連の吉祥寺に根付く「ハモニカ横丁」で12店舗を運営する、ビデオインフォメーションセンター(VIC)の手塚一郎氏(78)に話を聞く機会を得た。長年、横丁に携わり続けてきた手塚氏は昨今の飲食店業界、そして横丁ブームをどう見ているのか。