知られざる「虫ビジネス」の裏側

――高収入を得るために、狙って育てたりもするんですか?

蜂丸 儲けるためにはそのほうがいいかもしれませんが、やっぱり単純に好きで飼育している部分が大きいので、自分はのんびりやってます。安く仕入れて高く売れる虫を見つければ稼げますが、虫市場ではトレンドの動きが予測しにくいのもあって。

 定番の虫が売れることもあれば、SNSがきっかけで突然ブームになった虫がイベントのタイミングと重なって一気に売れることもある。だから流行る前から狙って繁殖させるのは、難しいという事情もあります。

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幼体のときは比較的安価に購入できるが、成体になると7万円ほどで取引されるという世界最大のムカデ「ぺルビアンジャイアントセンチピード」 ©細田忠/文藝春秋

――いろいろ育てて、どれがヒットするか待つみたいな感覚なんですね。

蜂丸 そんなイメージですかね。でも、中には個人的なつながりを含めて海外に独自ルートをもち、高額な虫を仕入れてくる事例もあります。海外で安く仕入れた虫が、日本に来ると1匹あたり20倍近い値段で取引されるケースもあるんですよ。

虫の仕入れ先はさまざま

――蜂丸さんは販売する虫をどのように仕入れているんですか。

蜂丸 イベントで購入や交換をしたり、インターネット通販だったり、いろいろです。視聴者さんから譲っていただくことも多いですし、勉強も兼ねてアルバイトしている昆虫ショップで仕入れることもあります。たまに雑木林で、自分で採集することもありますし。

世界最大のクモ「ゴライアスバードイーター」。価格は1匹2万円ほど ©細田忠/文藝春秋

――インターネット通販でも昆虫の売買ができるのは意外です。

蜂丸 メルカリのように生き物NGのプラットフォームもありますが、Yahoo!オークションの場合はOKなので。購入すると、発泡スチロール箱で生きたまま送られてきます。

 ただ、通販は幼虫を注文して育ててみたら別の種類だった、なんてトラブルもありました。幼虫の段階では見分けがつかないので、成虫になったときには販売業者が消息不明になっていた、という話も聞きます。だから、過去の取引履歴や評価はかなり慎重にチェックしてから購入するようにしています。

――採集は仕入れ代がかからないのでよさそうですね。

蜂丸 そうなんですが、僕の好きな虫って、だいたい大きかったり、すばしこかったりするので、採集するのがかなり難しいんです。5~6時間粘って全く捕まえられないこともありますし、なんとか捕まえても売値が1000円とかだと、コスパを考えたとしたらあまり割に合わないですよね。

 人によっては、現地で採集している方とつながりがあって、「5匹まとめて売れるけど、どう?」みたいなやり取りをして、実際に捕ってきてもらうこともあるようです。

1匹5000円ほどだという「マレーイッカクカマキリ」。カマキリやダンゴムシなど、馴染みのある虫でも種類によっては高値で取引される ©細田忠/文藝春秋

――穴場の採集スポットとかもあるのでしょうか。

蜂丸 ありますね。でも穴場を見つけても、公表してはいけない暗黙のルールがあって。「レアな虫が捕れました」と公開しちゃうと、お金目的の人が一気に押し寄せるんです。ひどい場合は、虫がいる木ごと切って採集する人もいるので、そういった事態を防ぐ意味でも、スポットは秘密にするのが慣習になっていますね。