大塚編集長の話をもとに発表までのスケジュールを整理すると、『現代用語の基礎知識』は毎年たいてい11月に発売されるので、編集部はそれに間に合うよう校了(本の校正を終えて印刷に回すこと)すると、そのタイミングで選考会の準備に入り、100語ほどピックアップする。そこから、先述したとおり審査員と一緒にノミネート30語の絞り込みと、受賞語の選考を10月末に行い、11月の第1週にノミネート語を発表したあとは、事務局とともに授賞式の場所と受賞者を選ぶ作業を進め、12月1日に発表――となる。
このスケジュールからすると、今回、ノミネートされた言葉のうち「女性首相」や「クマ被害」などは滑り込みで候補に入ったとわかる。
なお、1984年の第1回から現在にいたるまで受賞者には賞金はなく、授賞式では盾(『現代用語の基礎知識』の本をかたどった時計付き)が贈られる。あと、これも勘違いされがちだが、トップテンに選ばれた言葉に順位はなく、主催者側の認識ではあくまで、すべてが大賞という扱いである。毎回トップテンのなかから選ばれる年間大賞も、それがないとニュースにしにくいとのメディアからの要望もあって決めているだけだという。
もっとも、現在のようなトップテン形式になったのは1994年の第11回からで、それまでは「新語部門」「流行語部門」などに分けられ、それぞれ金賞・銀賞・銅賞に加えて、選考委員会の判断で特別賞などが設けられてきた。しかし、回を重ねるにつれて《これは本質的な手法ではないと廃止されることとなった》という(木下幸男『「流行語大賞」を読み解く』NHK出版・生活人新書、2006年)。大塚編集長も「細分化しておけば全部が網羅できているのかといったらそうでもない。『これは新語で、これは流行語』というのは、皆さんで判断していただければいいのかなっていうことで、トップテン形式に落ち着いていますね」と話す。
このほかにも、細かいところまで含めるといくつもの試行錯誤を重ねながら、ここまで継続されてきた。授賞式にも、この賞には『現代用語の基礎知識』の販売促進という目的もあるので、かつては書店員なども招いていた。しかしそれもコロナ禍でとりやめて以来、現在まで招待者は入れずに行っている。
「世界でも例のない試み」「『流行語』を定点観測して後世に伝えるべきでは」
そもそも、新語・流行語大賞はいつ、どのような趣旨から始まったのだろうか? この賞の立ち上げに参画した木下幸男氏(故人)の著書によれば、1980年代に入ったころより《マスコミ界のあちこちから「世界でも例のない試みとして『流行語』を一年に一度、定点観測して後世に伝えるべきでは」という声が上がり、それに応えてはじまった》という(前掲、『「流行語大賞」を読み解く』)。これを『現代用語の基礎知識』が全面的にバックアップすることになり、1984年に「日本新語・流行語大賞」という名称で開始された。

