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新語・流行語賞の醍醐味の一つに、受賞者の人選のユニークさがある。受賞者については第1回より「発生源周辺の人物・団体を顕彰する」と定められており、必ずしもその言葉を最初に使った人に限定せず、幅を持たせている。「パフォーマンス」で受賞した社会党のように、その言葉が世の中に広まるのに大きな影響力を持った人物や団体が選ばれることも多い。
もちろん、発生源を厳密にたどって受賞者を選ぶこともある。たとえば、1992年の新語部門・金賞の「ほめ殺し」は、佐川急便事件への政治家の関与を追及した週刊誌『サンデー毎日』の記者がこの言葉を最初に使ったとして表彰された。
もっとも、1990年の新語部門・銀賞の「“ブッシュ”ホン」では日本経済新聞の政治部記者が受賞したものの、新聞各紙の政治部記者のあいだでは「もっと早く使った新聞があったんじゃないか」との声が上がり、事実、毎日新聞の記事が初出であることが判明した。ただ、受賞した日経記者は《私の記事がいちばん早いかどうか疑問でしたが、その記事によって広まったというきっかけで決めるというので、それならとお受けしました》とコメントしている(『週刊宝石』1990年12月27日号)。
受賞者の人選は、選考委員会で受賞語が決まったあと、新語・流行語大賞の事務局が主に担当し、さらに授賞式への出席の打診も行う。事務局と賞を主催する自由国民社の『現代用語の基礎知識』編集部にとっては悩ましい作業だと、現在の同誌編集長の大塚陽子さんは話す。
