けんすう 日本でもこのままインフレ基調が続くと思うと、デフレマインドのまま日本円で貯金だけしている人は暮らしづらくなる可能性がありますよね。友達を見てても、10年前に高級なブランドバッグを買っていた人がその後値上がりがすごくて、今売ると中古でも買った以上の高値で売れている。昔、無駄遣いのように買っていた人のほうがむしろお金が増えてるんですよね。
あといま頭のいい人たちや富豪がなにをしているかというと、みんなどんどん借金していますよね。いまは借金したほうが有利だと思っている人たちが多い。
エミン 本当にそうで、日本は長い間デフレで、今の20~40代ぐらいの人は節約して貯金するのが安全と思ってるけど、これからはインフレマインドに切り替えて投資とかも若いうちにいろいろやっておいた方がアグレッシブに起業家精神も芽生えてきていいと思うんですよ。
学生時代にトルコのビリオネアが来日したとき通訳を手伝ったことがあるんですけど、ものすごい額の借金をしていました。彼の印象的な言葉があって、「私が銀行から1億借りたら私の問題だ。でも1000億借りたら、銀行の問題だ」と。つまり、彼からすると借金はみんなの問題なわけで、これぞスーパーインフレマインドです。
けんすう 借金も巨額だと借り手のほうがむしろ強いですよね。銀行だって返してもらわないと困りますから(笑)。
エミン ソフトバンクの孫正義さんがいい例です。ソフトバンクが潰れたら日本経済が傾くので巨額の融資をしている大手銀行がものすごく支援している。ある意味、賢い。
投資のストーリーはシンプルであるほど美しい
けんすう ちなみにソフトバンクで投資をやっていた知人がいるんですが、「孫さんは今どんな会社買いたいんですか?」と聞いたら、「全IT企業を買いたいと思っている」と。「日本のITは全部の株が安い」と言っているそうで、ものすごいスケールの世界です。エミンさんはどこに投資するか決めるときの基準とかスタイルってあるんですか?
エミン それこそけんすうさんのご著書『物語思考』の考えに近いんです。本では、自分の目指すべきキャラクターを明確に思い描いて物語の主人公のごとくそこに向かってストーリーを組み立てていく大切さを書かれていましたが、投資においてはシンプルであるほどストーリーが美しい。自分の見立てたストーリーが生きている限り投資を続けるし、ストーリーが変わったり消失すればやめる、だけです。
例えば、僕の成功例でいうとサイゼリヤです。当時自分が行って食べてみて美味しいなと感じたし、リーズナブルで外食需要でこの会社は伸びそうというストーリーがあったから投資しました。でもコロナ禍のときに売りました。人々は外食しなくなったし、ストーリーに変化があったから売却しました。
けんすう なるほどね。
