高騰したドミノ・ピザ株のストーリー例
エミン ストーリーでいうとドミノ・ピザもわかりやすい例でしょう。あの会社の株価はリーマン・ショックの後から大きく上昇しました。職を失った大量のアメリカ人が家にこもったこの時期、Netflixが流行りだしたんです。つまり人々は外食したり映画館にいったりせず、家でNetflixを見て、お腹が空いたらピザを食べる。折しもその頃ドミノ・ピザの社長が交代し、顧客が味に満足していないのを知って、味を徹底的に美味しくしたんです。
けんすう ネトフリのお供としてのピザ需要✕美味しい味というストーリーですね。
エミン 結果、ドミノ・ピザの株価はNetflix株に負けないくらい躍進したわけです。だから投資で成功してお金持ちになりたかったら、すごく先端の会社を見つけるとか次のブームを先読みするとか高度なテクニックは必要ありません。シンプルに、いいなと思う物語がそこにあるかどうかなんです。
もちろん自分が最初に描いた物語が間違っていたり、物語の筋はよかったんだけどタイミングが合わない場合もあります。僕は以前、アウトドア用品のスノーピークに投資していました。新潟の本社まで行って、雪の中でキャンプしている人たちを見て感動したから。
でも、何年経ってもいっこうに株が上がらない。だんだん不安になって、「自分のストーリーが間違っているのか?」と疑心暗鬼になり、手放してしまった。そしたら、直後にコロナ禍でキャンプブームが来て、株価が爆発した。悲しいことに!
けんすう アハハハ……。
バーチャルユーチューバーの会社に投資を決めた理由
エミン 筋のいい株だって一直線で上りつづけるわけではないですから、当然低迷したり下がったりもするわけで、ストーリーが生きている限り覚悟を決めて握りつづけるのは、ものすごいエモーショナルコストがかかる。だから投資で一番儲かるのは、証券口座の暗証番号忘れた人と、もうすでに亡くなった人の口座だという(笑)。
けんすうさんはエンジェル投資家として、どういう基準で投資判断をしているんですか?
けんすう 僕は、基本的に未公開のスタートアップにしか投資してないのですが、それのいいところは普通の株のように途中で売れないんですね。成功例でいうと、バーチャルユーチューバーの「ホロライブプロダクション」という会社に投資をしたのですが、「これからは肉体と魂が別になっていく」という壮大な物語が自分の中にあって、みんなバーチャル・リアリティ内でなりたい自分になれる時代がくるから、流行ると確信したんですね。
実際その通りになったんですが、初期の頃はずいぶん資金調達に苦労されていましたから、まわりがどうあっても自分の物語を信じ続けるのはエモーショナルコストがかかりますね。結局のところ、その物語が本物かどうかを見極める基準は何ですか?

