16歳とは思えない大人びた表情でアルコールを傾け…

 主人公は彼女の実年齢に合わせて大学生から高校生役に改変されていたが、バーのカウンターでアルコールを傾ける場面では、とても16歳とは思えない大人びた表情を見せている。相手役の松村雄基と並んでも、7歳差には見えない貫禄があった。

 しかし、華々しいトップアイドルとしては時代錯誤的な作品のチョイスだと感じる。中山がドラマの中で時代とぴたりと並走しはじめるのは、10月スタートの『な・ま・い・き盛り』(フジテレビ系)からである。

『な・ま・い・き盛り』は、普通の女子高生・加代子(中山)と幼なじみの同級生・浩介(中村繁之)の恋愛を描いた等身大の青春ドラマ。お互いに惹かれ合っているのに、ケンカばかりしている二人を中山と中村がテンポ良く好演した。

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『な・ま・い・き盛り』出演時。共演の中村繁之と(中山美穂のインスタグラムより)

中山美穂にとって初めての、等身大で開放的な役柄

 ビンタとキスシーンの多いドラマで、最終回ではパイ投げが行われているパーティー会場で二人が熱いキスを交わして結ばれる。毎回、中山のアップで終わるエンディングのNG集も微笑ましく、バブル時代のフジテレビらしさが見えてきたドラマだった。主題歌の「WAKU WAKUさせて」というタイトルも象徴的だ。

 このように等身大で開放的な役柄を演じるのは中山にとって初めてのことであり、思い出深いドラマだったようで、中村との交流は近年まで続いていた。同時期にスタートした不良少女のアクションドラマ『セーラー服反逆同盟』(日本テレビ系)と比べると、熱量も弾け具合も明らかにこちらのほうが上である。

2023年の中山美穂のコンサートに訪れた中村繁之。「数年前の私のバースデーパーティーにも来てくれて盛り上げてくれたシゲちん」「普段会うことは無いんだけど、毎年誕生日にはメッセージを送り合って」と長年にわたる交流を明かしていた(中山美穂のインスタグラムより)

 この頃になると、同世代の少女たちの圧倒的な支持を得るようになっていた。全国から届くファンレターは1日200通を超え、そのほとんどが女子小中学生のものだったという。中山は人口のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代の女性たちが憧れる、“少し年上のお姉さん”という座を手に入れていた。