次の途中駅へと歩く
田殿口駅を後にすると、あとはおおむね一直線に東へ走る。沿線はだいたいがみかん畑だ。
鮮やかなだいだい色のみかんがたわわに実り、濃緑の葉っぱと青い空。遠くに見える山々の斜面にもみかん畑が広がっているのが見える。そんな風景の中を、有田鉄道の列車は走っていたのだ。
有田鉄道線の途中駅は、田殿口駅の他にふたつあった。目の前に有田中央高校のある下津野駅と、みかん畑の中にある御霊駅だ。
有田鉄道線が消えたいまでも、もちろん有田中央高校には通う生徒たちがいる。通学のための鉄道がなくなって、さぞかし不便ではなかろうか……。
が、これもまったく心配する必要はなさそうだ。なにしろ、有田鉄道線は5.6kmの短い路線。廃止後はそっくりサイクリングロードになっている。
自転車で全線走っても30分ほど。高校生が自転車で通学するにはちょうどいい、安全な通学路なのだ。実際、ポッポみちを歩いていると、何人もの高校生とすれ違った。
イラストがあしらわれた駅跡?
御霊駅には、そのプラットホームの上にはコンクリートの駅舎が残っていた。きっぷを売っていたのであろう窓口や金属製のラッチ、また壁には運賃表がそのままに。
ただ、完全に廃止当時の姿のママでとはいかないようだ。駅舎の壁面には、カラフルなイラストがあしらわれていた。地元の子どもたちが描いたのだろうか。
そう思って調べてみたら、なんとプロの絵本作家が手がけたものなのだという。有田川町は「絵本のまち」を標榜し、児童書専門の図書館や絵本コンクールの運営などに取り組んでいる。そうした取り組みの一環として、廃駅や図書館も入る地域交流センター周辺の沿道に、絵本作家のイラストを施している。
個人的な意見を言えば、廃止された鉄道は当時の姿のままに朽ち果ててゆくさまを見せてもらいたい。が、町おこしという観点からすれば、有田川町の取り組みが正解なのだろう。







