全国各地に広まる可能性は…

「雨漏りしない屋根という第一条件もクリアしていますし、地元の方からも好感触です。ただ、今回は第1号ということもあって設計を含めた準備期間が通常より長くなっています。そのあたりは、課題といえば課題でしょうか。

 将来的に部材の劣化や不具合が発生する可能性もあり、その際のメンテナンス方法は分からないですが、当社およびグループ会社で蓄積した建物管理の経験により対応していくつもりです」

 

 いくつかの条件はあるにせよ、おおむね問題のなさそうな3Dプリンター駅舎。すると、今後も各地で目にすることになるのだろうか。

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「輸送や設置スペースなどを考えると、すぐにいくつも、とはなかなかいきません」とは益枝さん。ただ、それでも駅以外の建築物などへの導入も含めれば、大きな選択肢になってくることは間違いなさそうだ。

 

 そして、駅舎としての実績が重なれば、一般住宅への展開も見えてくる。セレンディクスの担当者は、「長期ローンで家を買う、またそれどころか自分の家を持てないという人をなくしたい」と野望を打ち明ける。

 資材高騰、地価高騰、人手は不足、夏の酷暑。駅舎ばかりか住宅建築をとりまく環境は厳しさを増す。3Dプリンターは、そうした問題を解決する切り札になるのかどうか。

 紀伊半島、みかん畑が見下ろす小さな駅は、その試金石を担っているのかもしれない。

 

撮影=鼠入昌史

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