――メンタルを病んでしまったと。

向 はい。とはいえ仕事はしなくてはいけないので、しばらくして再び別のホストクラブで働き始めました。そこは少し長くて2年ぐらい働きました。寝る間を削ってストイックに頑張りすぎたことで、最終的には再び病んで飛ぶことになるのですが。

――ホストでも無理をしてしまった。

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向 この時も経験値コンプレックスが出てしまいました。いやなことでも頑張るのが仕事だと思い込んでいたので、苦手なナンパでお客さんをお店へ連れてきたり、街で声をかけてすぐにホテルに行くのも自分の成長のためだと言い聞かせて、無理をしてきました。でも限界でしたね。

独占欲の強い女性に携帯を解約され、家族の連絡先も…

――仕事を転々として、ついに心が壊れてしまった向さんは、その後どうなったのでしょうか。

向 なにもかもいやになって、ホスト時代のお客さんのヒモになるという道を選びました。彼女は僕より年下だったんですけど独占欲が激しくて、一緒に住む時に携帯は解約、SNSのアカウントもすべて消しました。友達や家族の連絡先も全部消えて、彼女しか入ってない新しいスマホを渡されました。

 

――なかなか息が詰まりそうです。

向 生活費を援助してくれるんだから仕方ないと割り切っていたのと、それ以上に僕自身が疲弊しきっていて、「もう働かなくていい」「ゆっくり寝られる」ということだけで十分でした。することもないので映画を見たり、読書をしたり、飼っていた猫と遊んだり。小説家になるという目標を思い出しはしたのですが、やっぱり書けはしませんでしたね。

――それはどういう関係だったのでしょう。そのまま結婚、みたいなルートもありそうな気がするのですが。

向 1年半ぐらい一緒に住んだのですが、恋愛感情が湧くことはなかったですね。ずっと「お金を払ってくれる人」という存在のまま。そういえば、ヒモをしているときに僕、突然髪の毛と眉毛を全部剃り落としたことがあるんです。「お前が俺を好きな理由はどうせ外見なんだろ。だったらこんな外見になっても好きと言えるのか」って。これも今思えば、無意識に溜め込んでいたストレスが爆発した結果の行動だと思います。相手への精神的攻撃のつもりでした。

 

――そもそも向さんって女性を好きになったことはありますか?

向 本心から好きというのはないのかもしれません。一度メイド喫茶時代にちゃんと付き合おうと思った子がいたのですが、その女性から「あなたは私を好きなふりをしている」と言われました。初めての彼女にも「人のふりをしている」と言われたし、距離が近くなると僕がちゃんと人を好きになれないのがわかってしまうんだと思います。自分でも愛情を受けた感覚がなくて、愛情表現をするのは今もずっと苦手です。

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