――居場所は教えてくれたんですか?

鳥羽 ああ、「兄貴のためなら」って、先生の自宅の住所や電話番号をあちこち電話して調べてくれたんだ。それで俺は弟に聞いた先生のご自宅に電話したら、たまたまお弟子さんが出て、なぜか親切に「テレビ番組に出るから、その前日は近くのホテルに泊まっているよ」と教えてくれたんだ。

――そんな個人情報を。今だったらアウトですね(笑) 。

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鳥羽 当時も普通は教えないと思うんだけど、その時は不思議と運が続いたんだよねえ。それで親には「東京にちょっと板前修業に行く」って嘘をついて上京したんだ。

 

「マグロ漁船乗っていた人が歌手になるのはおかしいでしょ?(笑)」

――先生にアポイントをとったんですか?

鳥羽 いや、飛び込みだよ! そのホテルに行って、フロントで「船村先生はどこにいますか?」って聞いたんだ。そしたら、ホテルのなかにある寿司屋にいることが分かってね。部屋に電話してもいないから、フロントの人が親切にも館内放送をかけてくれて分かったんだ。

――館内放送はすごいですね。

鳥羽 ああ。寿司屋の暖簾をくぐると、先生はマネージャーさんなんかと飲んでいた。それで「何十年もこのホテルに通っているが、館内放送で呼び出し食らったのは初めてだ。さあ、君も一杯飲みなさい。寿司も食べなさい」と言ってくださった。

――いきなり来たのに、ずいぶんフレンドリーな。お話はできたんですか?

鳥羽 そう。でも10分ほどで部屋に帰っちゃったんだ。そしたらマネージャーさんが「はるばる鳥羽から来たのなら、明日の朝、先生が出る生放送をテレビ局に見にきたら?」と誘ってくれたんです。

――マネージャーさんも、優しいですね。

鳥羽 そうだねえ。それで朝の番組だから、朝の5時にテレビ局の前でずっと待っていたら、ハイヤーが来て先生が降りたの。「先生、昨夜はありがとうございました!」と頭を下げたら、全く覚えてないの! 

――先生、寿司屋で、だいぶお酒を飲まれていたんでしょうか?

鳥羽 そうかもしれない。「君、誰だっけ?」っていうリアクションすらなし。だけど番組が終わった時、なぜか先生が「今から千葉の館山にゴルフに行くんだけど、君もちょっと一緒に来る?」って声かけてくれて。

――どこの誰かも忘れた鳥羽さんとゴルフに?

鳥羽 そう。急遽、ゴルフについて行ったんだよ。たぶん、誰かに館山まで車を運転してほしかっただけかもしれないけれど。そしたら住み込みの弟子にしてもらえることになった。

 

――当時、そんなに簡単に弟子になれるものなのですか?

鳥羽 いや、そうでもない。弟子になりたい人は実際、たくさんいて、断られることがほとんどだと思う。だから振り返ると、本当に謎なんだよ。

 あの時、どうして俺はいろんな好きな先生がいるなかで、船村徹先生に会いにいったのか? さらに先生の居場所をなぜ弟子が教えてくれたのか? そして船村先生はどういうわけで俺を弟子にしてくれたのか? なんか弟子になるまでも神がかっているというか。そもそも、マグロ漁船乗っていた人が歌手になるのはおかしいでしょ?(笑)