海の男の気持ちを歌い続ける演歌歌手、鳥羽一郎さん(73)。紅白出場20回を数え、デビュー曲であり代表曲の「兄弟船」など数々のヒット曲を持つ大御所歌手だ。

 しかしデビュー前の17歳の頃にはマグロ漁船に乗ったことも。荒れる海での命がけの航海、極寒のマグロ冷凍庫、そして寄港地でのナイトクラブ大豪遊……。海の男の青春時代を聞いた。(全4回の2回め)

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――マグロ漁船に乗られたのは、鳥羽さんが17、18歳の頃ですね。どんな船でしたか?

鳥羽 「大勢丸(たいせいまる)」っていう三重県の水産高校や大学、水産試験場が共同で持っていた実習船でね、全長50メートルちょっと、約580トンあるんだ。ちょうどその年は、三重県立水産高校の高校生が実習で乗るんだけど、彼らだけじゃ定員が埋まらないから、マグロ漁師(乗組員)も一緒に乗ることになったみたい。高校生と乗組員が半々くらいで、総勢40人くらいだったかな。

 

――一度、港を出るとどのくらいの期間、海の上なんですか?

鳥羽 三重からマグロが獲れるパナマ沖まで往復するから8カ月は帰れないね。高校生や船長とか偉い人は揺れが少ない船の後ろに寝るんだけど、俺なんか下っ端の乗組員は船の舳先の大部屋だから、嵐がくれば海に叩きつけられる。

――大きな船でも揺れるんですね。

鳥羽 古い船だったからね。一度、八丈島の沖合で嵐が来たときなんか、舳先が海にズボッと入ったままなかなか浮いて来ない。それで非常ベルが鳴って、安全な後ろのブリッジ(操縦室)まで避難するにも、甲板を通らないとならなくて。真夜中だったからね、両側から波がかぶるし、本当に命がけだったよ。

「眠くて海に落ちそうになるし、睡眠時間は2、3時間くらい」

――お風呂は入れるんですか?

鳥羽 当時はシャワーは海水だし、食事は魚料理ばかり。飽きたなあ。でも同じ歳くらいの高校生がたくさんいて、自分も高校に行った気分になって嬉しかったな。

――その高校生たちと一緒に作業をするんですか?

鳥羽 いや、高校生は記録とったりするのが主な仕事。ちょっとは実習で作業もするけどね。実際のマグロ漁は俺たち乗組員がやるんだ。漁場に着くまでは、ひたすら延縄の準備。デッキの上で、ドラム缶にコールタールを入れて燃やして溶かして、それで藁縄を染めるんだ。防腐剤がわりだね。今は化学繊維だからそんなことしないけど。

――漁場に到着するとどんな感じなんですか?

鳥羽 もう毎日が修羅場だよ! 朝3時起きで数千メートルある延縄の準備をして、針に延々とエサのサンマをつけて仕掛けた後は、また延々と夜遅くまでマグロを引き上げるんだ。もう腕はしびれて感覚がなくなるし、眠くて海に落ちそうになるし、睡眠時間は2、3時間くらい。