このところ、JR南武線の評判がいまひとつらしい。

 今年3月にワンマン運転を開始してからというもの、乗降に時間がかかったりなんだりでラッシュ時の遅延が常態化。もともとやたらと混雑していることでも有名だったから、それに輪をかけて、といったところなのだろう。

 川崎~立川間を結ぶ南武線という鉄道路線、東京都心に直結しているわけではなく、ほぼ一貫して多摩川沿いを走っている。にもかかわらず混雑しているのは、途中に武蔵小杉・武蔵溝ノ口・登戸といった都心直結の私鉄路線と交差する駅が連続するからだ。

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 それに加えて、南武線単独の駅の周りもビッシリと住宅地が広がるベッドタウンだ。そこに暮らしている人が、私鉄との乗換駅まで乗ったり降りたり。それを首都圏の通勤電車にしては短い6両編成でこなしているのだから、むしろ頑張っていると褒めてやってもいいくらいだ。混雑や遅延に多少の文句をつけるのも、親しみの裏返しとでも言うべきか。

 そんな愛すべき南武線。乗換駅のほとんどはせいぜい駅前のペデストリアンデッキを横切るぐらいで済むので、特に不便を感じることはない。ただひとつだけ、厄介な乗換駅がある。京王相模原線との乗換駅、稲田堤駅である。

JR南武線“ナゾの途中駅”「稲田堤」には何がある? 撮影=鼠入昌史

ナゾの駅「稲田堤」には何がある?

 稲田堤駅があるのは南武線起点の川崎駅から20.8km地点、川崎市多摩区だ。東西に細長い川崎市の北西端、多摩川の河畔の駅である。

今回の路線図。京王相模原線と南武線が交差する稲田堤。いったい何があるのか。

 多摩区の中心にして南武線と小田急線が交差する登戸駅より2駅西へ。さらにひとつ進んだ矢野口駅はもう東京都稲城市だから、川崎市の端っこの駅、ということになる。

 この稲田堤駅だけを取りあげれば、南武線の中では小駅の部類に属するといっていい。幅の狭いホームが2面向かい合い、その西の端っこに橋上駅舎に通じる階段を持つ。

 

 駅舎は構えこそ立派でも、とくに商業施設が入っているわけでもないシンプルなものだ。