結婚後、香奈は私の家によく遊びに来るようになりました。三人で食事をしたり、温泉に宿泊したこともありました。夫は憧れの香奈を目の前に無邪気にはしゃいでいましたが、私は嫉妬を覚えるようなことはありませんでした。

 私は香奈が心から好きでした。私にとって香奈は、たとえ夫が好きになったとしても仕方がないと思えるほど大切な友達だったのです。私は香奈のことを知り尽くしていて、夫がどれだけアプローチをしたとしても、香奈が振り向くことは絶対にないとわかっていたからかもしれません。

 夫自身も香奈を見ていれば、自分が恋愛対象にならないことは自覚していたはずです。だからこそ、無理やり自分のものにするタイミングを見計らっていたのです。

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まさか親友の夫が手を出してくるなんて

 香奈は突然、職場を辞めることになりました。この決断には私も夫も驚かされました。憧れの人が職場から消えてしまうことは、夫にとって何より耐えがたかったようです。香奈の送別会の日、夫は香奈を自宅までタクシーで送り届け、香奈が自宅に入ろうとしたところを襲ったのです。

 香奈の自宅の最寄り駅は、私たち夫婦の自宅の最寄り駅の隣でした。夫は飲み会の度によくタクシーで香奈を自宅に送り届けて帰ってきていました。ガードが堅い香奈ですが、さすがに親友の夫が手を出すとは考えなかったでしょう。