「東京を離れて暮らそう。田舎で温かい家庭を作るのもいいんじゃないかな」

 夫はやってしまったものは仕方がないとばかりに開き直り、泣いている私を励ますのでした。

犯罪者の家族になった絶望

 親友を失い、犯罪者の家族となり、実家の支援も受けられない私は、それでも夫の言葉から希望を見出すしかありませんでした。

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 警察から逮捕の連絡を受けた時、被害女性の氏名は教えてもらうことができませんでした。被害者が香奈だと気が付いたのは、裁判で被害者の証言を聞いた時です。夫が香奈に関心があることはわかっていましたが、まさかレイプするなんて……。

 犯行は計画的でした。そのシナリオは、私と結婚する前から作られたものでした。私は夫の犯行に利用されたのです。

目立たない社員だった夫

 良太は幼い頃から成績優秀で有名な国立大学を卒業していますが、社内では有望視されている人材ではありませんでした。要領が悪く、コミュニケーションが下手で、同期の中では目立たない社員でした。

 結婚の時、良太は恋愛の自由を認めて欲しいと言い、つまり、愛人を作るような物言いでしたが、私は外見も平凡な良太にそんな女性ができることはないと思っていたのです。

 そんな良太は、香奈の視界には入っていませんでした。香奈が良太の存在に気がついたのは、私の夫になったからです。