「時計」でも「電卓」でもない、意外なカシオのルーツとは?

 実はCASIOウオッチリングコレクションの登場に先行して、社内では別のプロジェクトが動いていた。超小型モジュールの開発だ。

 同社には、新技術を発表する「新技術委員会」という組織があり、奇遇にも2023年に従来の約10分の1サイズという超小型モジュールのアイデアが提案された。人知れず、カプセルトイのヒットで極小サイズの時計の市場が確かめられ、さらにそれを実現する技術開発も進んでいたのだ。

 小島氏によると、水面下で進んでいた技術開発に、カプセルトイの反響を受けて弾みがついた。徐々に開発者たちの間で「指輪サイズで動く時計を実現する」という機運が高まっていったという。

ADVERTISEMENT

 もう一つ、指時計の開発を後押しした要因がある。それは、2024年がカシオの時計進出から50周年の年だったこと。

 歴史を振り返ると、実は同社を躍進させた最初のきっかけは、電卓でも腕時計でもない。現在の代表的な商品を手掛ける基盤となったのが、1946年に発売した「指輪パイプ」だ。タバコを差すと根元まで残さず吸えるという、いまでいう「アイデア商品」のようなもので、戦後の経済成長期に大ヒット。これが会社の資金基盤となり、後の電卓や時計開発へとつながった。

カシオの礎となった「指輪パイプ」

「50周年ということもあり、時計と創業時の指輪パイプを組み合わせた商品ができないかと考えていたんです」(小島氏)

従来の「10分の1サイズ」だからこそ、苦労したポイントとは?

 こうしていくつもの偶然や思惑が重なって指輪サイズの時計開発が始まったものの、まだまだ課題はいくつかあった。例えば、指のサイズだ。当初から世界展開を前提にしていたため、どのサイズが最大値なのかを検討する必要があった。

 そもそも社としてジュエリーを手掛けた経験がないため、指輪に関する知見がなかった……のだが、ジュエリーデザイナー経験者が社員にいたため、その知見を借りながらサイズ設定を行っていった。結果、22号(内径約20ミリ)をベースサイズとし、19号用と16号用に調整できるスペーサーと呼ばれる器具を同梱する仕様に落ち着いた。

 その他、カプセルトイの反響を受けて市場が明らかになったことから、できるだけ早く商品を投入するよう上層部の指示があったという。開発期間を通常より大幅に短縮する必要がある中、部品製造には3Dプリンターを活用するなどで効率化を図れたものの、組み立てには苦労した。

 というのも、CRW-001の基本的な製造ラインは通常の時計と同じだが、従来品の10分の1サイズであることから、組み立ては手作業が中心。特に直径約1ミリのサイドボタンは、中にパッキンを入れて防水構造にする必要があり、組み立て技術の教育には時間を要したという。