火葬された遺骨をいっさい引き取らないというやり方を指す「0葬」を提唱した宗教学者の島田裕巳さん。そうすれば墓を建てる必要もなく、遺骨の処理に頭を悩ませる必要もないと説明する。
ここでは、そんな島田さんが葬式や墓の在り方について、前提に疑問を投げかける『無縁仏でいい、という選択 墓も、墓じまいも、遺骨も要らない』(幻冬舎新書)から一部を抜粋して紹介。
遺骨をどうしたらいいかわからず困っている人のための“送骨”とは一体どんなサービスなのか。必要とされる背景とは――。(全3回の3回目/最初から読む)
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廃品回収車が「遺骨、引き取ります」と町内を回る日
無縁遺骨とは、遺族が引き取りを拒否した結果、地方自治体が保管している遺骨のことである。その数が増え、自治体はその対応に苦慮しているというのだ。
遺骨の処理に頭を悩ませているのは、自治体だけではないであろう。自宅に骨壺に入った遺骨があり、その処理に困っている人たちは少なくないはずなのである。
いったいそうした遺骨はどれほどの数にのぼるのだろうか。
そうしたことについての調査や研究は乏しいのだが、一つ、株式会社霊園・墓石のヤシロが関西圏で行った調査がある。それは、2019年5月末~6月初旬に行われたもので、40~79歳の男女を対象とし、有効回答数は2万5347件だった。
そのうち、「自宅で遺骨を保管している」と回答した者は7.1パーセントに及んだ。
人数としてはおよそ1800名になる。そのうち、「納骨する予定があるが、現在は自宅で保管している」が全体の5.2パーセントで、その予定がないのが1.9パーセントだった。
予定がない人たちの中には、あえて遺骨を手元に置いて故人を偲ぶ「手元供養」をしている人たちも含まれている。
積極的に手元供養をする人たちは別だが、中には、遺骨を持て余している人たちもいることだろう。予定があると答えている人のうち10.6パーセントは、「お墓の購入がまだのため」と答えている。あるいは「金銭的な問題のため」をあげる人たちも5.8パーセントに達している。そうした人たちは、果たして今後、墓を購入するだろうか。
