今の状勢では、そうならないケースの方が多いはずだ。
これは関西圏での調査である。関西圏では部分拾骨で、引き取る骨の量は少ない。それで、遺骨を自宅に置いたままにしてもさほど苦にならないのかもしれないが、東日本では全拾骨で、骨壺はかなり大きい。そうなると遺骨の圧迫感はかなりのものになるはずだ。
巷では、廃品回収を行う車が走っていたりする。もし「遺骨引き取ります」とアナウンスしながら街の中を走ったとすれば、引き取りを希望する家はかなりの数にのぼるのではないだろうか。ただ、隣近所の手前、手を上げる家は限られるかもしれないが、車が頻繁に回るようになれば、気軽に引き取りを希望するようになるのではないだろうか。
「送骨」サービスならゆうパック、3万円で遺骨を引き取る
世の中には、これに近いサービスがある。それが「送骨」である。寺院の中には、遺骨の引き取りをすると宣伝しているところがある。相場もあり、3万円程度で引き取ってくれる。
送骨のやり方は簡単である。それを受け入れてくれる寺に、ゆうパックで送ればいいのだ。遺骨はゆうパックでは送れるが、一般の宅配便では送れない。なぜそうなのかはわからないが、規則で決まっているのだ。送られた遺骨は、永代供養墓に合祀される。
送骨をするくらいなら、0葬にすればいいわけだが、その知識がない人もいるだろう。東日本だと、0葬ができないところが多いので、その代わりに送骨が選択されることになる。海洋散骨する業者の中にも、送骨という形で散骨を請け負うところがある。
送骨に行き着いてしまうのも、結局は、戦後すぐにできた墓埋法で、遺骨は墓地に埋葬しなければならないと規定されているからである。
この法律は公衆衛生の観点から定められたもので、重要なのは遺骨ではなく遺体の方だった。遺骨は腐敗しないが、遺体は腐敗し、それが感染症を拡大させる危険性があるからである。
墓埋法が制定された時代には、土葬と火葬が半々だった。その後、火葬が急速に増えていくが、おそらくそのことを墓埋法を制定した人間は想定していなかったであろう。
遺骨を墓地にしか埋葬できないということは、実質的に墓を建てることが強制されているようなものである。その点が、法律ができた時点でまったく認識されていなかった。
その結果、今では、遺骨を持て余す家が増えているのである。
葬式や火葬、墓のことになると、政治家は関心を持たない。亡くなった人間は有権者ではないし、そんなことに熱心に取り組んでも、票を稼ぐことに結びつかないからだ。
