HANAと天童よしみが重なる理由

「きっととても性格のいい子たちなんでしょうね」「苦労してきたら、そうなります」

 先日『AERA DIGITAL』「コンプレックスの広場」という特集で歌手の天童よしみさんを取材した際、今年同じ紅白のステージに立つHANAの話をしていて、天童さんはこう話していました。

2025年で、29年連続30回目の紅白出場となる天童よしみ ©文藝春秋

  なぜでしょう、HANAを見ていると、どうしても天童さんと重なる。かつて歌手を目指していた上沼恵美子が「どうしても勝つことができなかった」という、天童よしみ。御年71歳で昭和100年記念に昭和の名曲100曲を6時間ぶっ通しで歌うという凄まじすぎるコンサートを開催するなにわの歌姫。100曲歌い終わった後、どんなことを思いましたか? という私の質問に「まだ歌えると思った」と笑って答える、元祖実ボ*の女。
*ノノガオーディションの際、ちゃんみなが高いスキルを見せた候補者を表現した「実力の暴力」の略

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「こんなに才能がある人がなぜ売れへんのか」

 上沼さんがしばしば「こんなに才能がある人がなぜ売れへんのか、ほんと納得いかなかった」と言う通り、天童さんの芸能生活は茨の道。若くして『いなかっぺ大将』の主題歌『大ちゃん数え唄』というスマッシュヒットを放つも、その後なかなかヒット曲に恵まれず。しかしそれ以上に天童さんを苦しめたのは「もっとスマートになれ」という強烈なルッキズムだったといいます。デビュー直後、憧れの歌番組への出演に夢を膨らませていた天童さんに告げられたアドバイス。

「ある日電話がかかってきて『天童さんが出演したがっていた番組が決まりそうなんです』って。『でも一つ。天童さん、お米は好きですか?」って言われて、「大好きです。何杯でも食べます!』って答えたら『ちょっとスリムになりませんか? そのほうが綺麗に見えるし』って」

「本当に外見のことを言われ続けた時期があった」という天童さんの述懐に、ノノガ最終審査@KアリーナのステージでのCHIKAの言葉が蘇りました。

「自分の見た目が嫌いでした。自分の声すら嫌いでした」

高い歌唱力を誇るHANAのCHIKA。「No No Girls」では容姿へのコンプレックスを明かしていた(HANA公式Xより) 

容姿への批判で、無効化される才能

 高校生ラップ選手権で世に出た17歳の時に浴びせられた「醜いブスが歌ってんじゃないよ」を『美人』で歌詞にしたちゃんみな。その『美人』を最終審査でカバーし「理由は体型/45kg最低/もっと磨け磨け/スキルより外見」と歌ったHANAのCHIKA。どんなに歌がうまくても、どんなにダンスが上手でも、どんなに面白くても、どんなに賢くても、どんなにすごい絵が描けても、どんなに明るくても、どんなに暗くても、ただただ普通に生きていても、「でもブスじゃん」「デブじゃん」という言葉でその全てが無効化されるような記憶。その記憶を引きずったまま大人になった女性は少なくないと思います。

「容姿批判をされた時、天童さんはどうしていたんですか?」と聞いた私に、天童さんはこう答えました。

「私は性格も明るく産んでもらって、そこには助けられてきましたけど、それでも見た目のことを言われたら、1週間ぐらい傷つくんですよ。もうグサッと刺されたみたいに、膝抱えてそのまま暗い子になる」