抗議の電話が殺到した「伝説の回」とは?

 そんな「ダメもと」のドラマで、武田さんにオファーがあった役は中学教師。

「運命的なものを感じましたよね。もともと福岡教育大学に通っていて、将来はろう学校の先生になるつもりでしたから。ちょっと勇むところはありました。教育実習などで理想の先生を何人も見ていましたので、プランもいくつかあったんです」

もともと、教師になる夢を持っていた ©三宅史郎/文藝春秋

 金曜8時だから「金八」。覚悟が感じられる役名だが、深刻だったのは生徒役だった。30人の生徒のうち芝居経験のあるのは杉田かおると鶴見辰吾だけ。あとはほぼ全員素人だった。

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「自分にカメラが向くとピースサインするような連中でしたからね。でもスタッフがそういう若者の扱いに慣れていたんです。例えば10分のシーンを撮る場合、もし8分でとちったら、最初からやり直すというルールを決めた。するとみんな真剣になって、約2カ月後には俳優っぽくなってきたんです。半年もすると杉田や鶴見を抜くぐらいの子もでてきましたから」

 最高傑作は、杉田演じる15歳の浅井雪乃が同級生との子どもを妊娠する回。

「これはすごかったですね。抗議の電話がテレビ局にじゃんじゃんかかってきて。ロケ先の学校からも撮影禁止の通達がくるし。でも柳井プロデューサーはにっこり笑って、『この週、数字いいですよ』って。嫌な商売だなって。でもその影響でしょうね、放送開始から3カ月でライバル番組に肩を並べるまでになるんです」

最終的に、30年以上も続くシリーズとなった『3年B組金八先生』(TBSチャンネル公式サイトより)

 放送開始後から評判を呼び、最終的に最高視聴率は40%近くに達した。「金八先生」は武田さんの代名詞のようになり、シリーズ化される。負け戦どころか、30年以上にわたって続く作品になった。

教師とはかけ離れた「トレンディドラマ」も

 一方で、そんな教師イメージからかけ離れた役を任せる動きがフジテレビで起きていた。1991年に放映された『101回目のプロポーズ』である。金八として教師のイメージも強かった中、トレンディドラマでモテない男の役を演じたのである。