「意味が分かんない」「交通違反じゃねえか」…伝説のシーンの舞台裏
念のために記すが、『幸福の黄色いハンカチ』『3年B組金八先生』と異なり、『101回目のプロポーズ』のオファーは代役ではなかった。だからこそ、武田さんは出演したときの戸惑いを次のように話す。
「私以外はトレンディ俳優ばかりでしょ。サギの中に1羽のカラスが交じっている感じでした。しかも第6話でどうしてもついて行けない設定があったんです。ダンプカーに向かって飛び出すシーンです。
浅野温子さん演じるチェリストの矢吹薫は恋人を交通事故で亡くした過去があって、それが忘れられなくて泣く。そんな彼女に向かって、私が演じる星野達郎がやったことはダンプカーめがけて飛び出して『僕は死にません!』。俺は意味がわかんないって、プロデューサーと軽い喧嘩になったんです。『俺、“学校の先生”役をやっているからできない。交通違反じゃねえか』って」
その抗議は受け流され、予定通り演じることに。武田さんは演技プランを熟考した。
「このシーンを成立させるためには、40歳を超えた男がガキみたいに泣きじゃくる。子供がおもちゃ欲しがるみたいに。そういう心境になったときに一瞬だけ、成立する可能性があるなと。
ロケ撮影だったから周りに浅野温子目当ての不良めいた子たちもたくさん集まってきて、その中でやったんです。でもあのシーンを撮り終えると、ギャラリーの不良っぽい男どもも泣いているんですよね。放映後、あんなに評判呼ぶとは思ってもみなかったですよ」
このシーンは、『幸福の黄色いハンカチ』や『3年B組金八先生』で鍛えられて得た財産を存分に発揮したと振り返る。
「ギャラリーがたくさん集まってきたので、『君たち静かにしてくれるかなぁ』と金八先生っぽく注意したりね。芝居本番になったら、もう路上パフォーマンスですよ。『幸福の黄色いハンカチ』はオールロケだったから、見物人のことなんか気にしている場合じゃない。俺たちは道端で劇をやるんだと叩き込まれたから。あとは山田監督から言われた、“喜劇っていうのはね、泣きながら作るもんだ”っていう言葉も活きた。すべての経験を芝居に投入しました」

