ただ個別には両者が対応しているわけではない。国防意識が最も高いマレーシアや、かなり高いインドや南アフリカなどは徴兵制をもたない。逆に徴兵制をもつコロンビアや法的には徴兵制を発動可能なスペインや米国では国防意識は低いのである。
なお、徴兵制については、冷戦が終結し、ロシアが米欧と接近したのを受けて、21世紀に入ると徴兵制をやめる国が相次いだ。フランスは2001年(2026年半ばまでに、新たな志願兵役制度導入との報道あり)、イタリアは04年、ドイツは11年(2026年1月より新たな兵役制度導入との報道あり)にやめた。
だが、ロシアが14年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合したのが転機となり、ロシアの軍事的脅威に敏感な国を中心に復活の動きが出ている。
フランスはテロの脅威を理由により2019年新学期開始時に「普遍的国民奉仕」を導入したり(注)、リトアニアのようにロシアによるクリミア併合によるロシアの脅威を理由に徴兵制へ戻すなど徴兵制を復活させている国もある。
(注)マクロン大統領が提唱した制度であり、もともとは徴兵制の復活を目指したが、最終的に16歳前後の男女に1カ月の義務的な社会奉仕(軍事・公共機関での訓練とボランティア)と、3カ月~1年間の任意参加の奉仕活動(国防・福祉分野など)を組み合わせた2段階の社会参加プログラムとして導入された。
なお、中国の徴兵制は、法定制度としては認められているが、実際には行われていない(上の印では△)。
このように人的側面からも世界各国の国防意識は高まりつつあり、日本においても、上で見た財政的な軍事費支出だけでなくこれまでタブーとされてきた徴兵制についてもいずれ本格的に議論される時が来る可能性がないとはいえない。
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『統計で問い直す はずれ値だらけの日本人』(星海社新書)。
