理事になってから気づいたこと
――日本将棋連盟の理事は、多くは棋士・女流棋士が務めます。ほとんどのプロは対局・普及に力を割いてきて、事務方の経験がほとんどなかったとしても運営の中枢にかかわるわけです。糸谷八段といえども、その辺りは大変じゃないですか。
糸谷 そうですね。まずは勉強から入ります。職員の方から現場の話を聞いて整理するのも大事ですし、経理・総務・人事とひととおりのことは専門書を読んで勉強しないといけません。
――それは、いままでやってきた将棋や大学の勉強と頭の使い方が違いますか。
糸谷 資格勉強に近いと思います。特に経理はそうですね。あとはハラスメントもアドバイザー試験用のテキストを読んで勉強しています。
――当たり前のことかもしれませんが、率先して学ぶ姿勢はトップに問われるものですよね。将棋や大学以外の知識を学ぶにつれて、自分自身の価値観が変わりましたか。
糸谷 人事に関しては知らない事実が多かったですが、特に価値観が変わるほどではありません。新鮮さという意味では、やはり現場の話ですかね。
この商品はどういう層に受けている、お客さんからこういう反応があったとかは、職員から話を聞いてみないとわかりません。いくらビジネス書を読んでも、将棋に関するマーケティングは書いていませんからね。
例えば、関西本部では宝塚歌劇団やK-POP好きの職員がいて、そこで販売されるグッズからヒントを得て商品を開発しています。ファンからのアンケートを基にした、棋士のアクリルスタンドも好評です。
まずはルールを知ってもらう機会を
――従来の棋士グッズといえば、棋士の揮毫を基にした扇子が主流のイメージです。アクスタなどは気軽に買えて集める楽しみがあり、どちらかといえば「観るのが好きな将棋ファン」向けの商品に見えますね。
将棋ファン層は、大きく分けてしまえば将棋を指す・指さない、プロの対局を見る・見ないなどのカテゴリーがあります。指すだけでも、初心者、級位者、有段者、高段者などの棋力でも分類できます。糸谷八段は将棋ファン層をどういうものだと分析していますか。
糸谷 実際はグラデーションなので、きれいに分かれていないはずです。我々にできることは、それぞれの特徴を持った層にどうアプローチしていくかでしょう。
例えば将棋を指すのは好きでも、棋士やプロの対局に興味がない人はいますよね。そういう人に提供できるのは、基本的に将棋大会や戦術書になります。最近、連盟が力を入れている棋士のグッズは「好きな棋士がいる」というファンに向けてです。
そして、将棋を指さない、見ない、棋士に興味がない層というのも当然いるわけで、そういう方々にはまずルールを知ってもらう機会を作ってアプローチすることになります。



