ファンが「復帰しなくていい」と語った理由

 ファンにとって、このカップル成立は、映画やドラマがリアルになる感覚。とはいえ、21歳、さあこれからという若さで大好きなスターが引退するのだから、寂しさは計り知れないものがあっただろう。スタッフも慌てたはずだ。それでも、百恵の決断を応援する人は多かった。

『蒼い時』には、引退時の周囲の反応も書かれており、いつも地方を共に回るバンドメンバーはコンサートでの「恋人宣言」のあと、とても喜んでくれたという。

 昨年12月25日に放送された「昭和100年SP 決定的映像!心に刻まれた100人」(フジテレビ系)では、ファンの祝福の様子を見ることができた。山口百恵さんは16位にランクイン。日本武道館で行われたファイナルコンサート直前の映像が流れ、全国から別れを惜しむファンたちが、涙をこらえながらコメント。しかも、「辞めないで」ではなく、

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「復帰しなくていい。百恵ちゃんはきっとしない。このまま幸せになって」

 と言うファンが意外なほど多かったのだ。「結婚が女性にとって一番の幸せ」と考えられていた時代というのもあるだろうが、決してそれだけではない、熱いファン心を感じた。

©文藝春秋

 そしてもう一人、二人の結婚を潔く祝福したのが、当時、百恵さんが所属していたホリプロの社長だった堀威夫氏。百恵さんも三浦友和も、この堀氏こそ「結婚の一番大きな壁」と考えていたという。

 しかし、実際は違った。「何より百恵の意志であるから受け入れたい」と語り、承諾した。堀氏は、「昭和100年の100人 スタア篇」(文春ムック)のインタビューで、当時をこう振り返っている。

〈言葉を失うほどのショックでした。(略)引き止める余地のないほど、百恵の眼差しから強い意思を感じました。(略)今もたまに電話で話をしますが、復帰の話はまったくしません。私自身、復帰はないとずっと確信しています。「大和桜は花と散れ」――。百恵はそういう女性でした〉