「産む前から分かってたら、リタを産まなかったの?」夫の言葉で、前を向けた
――出産直後、学さんと2人で話す時間はありましたか。
アンナ 本当は赤ちゃんを見たらすぐ仙台に帰る予定だったんですけど、私が1人ではいられない状況だったので、ずっと同じ部屋で寝泊まりしてくれていました。
その病院、本当は夫婦の同室宿泊がNGだったんですけど、院長先生が「絶対に彼女を1人にしないでほしい」と強く言ってくださって。
――その時、学さんとどんな話をしたか覚えていますか。
アンナ 私がろくに話もできないくらいずっと泣いていたので、彼はただただ背中をさすってくれていて。そんなときにポロッと、「産む前に分かってたらよかったのに」と言ったら、「産む前から分かってたら、リタを産まなかったの?」と聞き返されました。
私、それで言葉に詰まってしまったんです。
――そうだったんですね。
アンナ 黙っていたら、「俺は右手のことが分かっていたとしても、アンちゃんに生んでほしいと頼んでいたよ。俺にとっては、覚悟できていたか、覚悟できていなかったか、それくらいの差でしかない。それに、俺はこの子が俺とアンちゃんの間に生まれてきて良かったと、幸せにしてあげられる自信がある」と話してくれて。
産後にちゃんと彼と話したのって本当にそれぐらいなんですけど、その言葉を聞いて気持ちが軽くなったんですよね。
それまでは「この子はあれもこれもできないんだ」って悲観してたけど、この人とだったら大丈夫かもと、ちょっと前向きになれたんです。
――逆に、学さんが動揺するようなことはなく?
アンナ 私自身に余裕がなかったというのもあるんですけど、彼はずっと前向きだったし、とにかく子どもがかわいい一心で、幸せそうな印象しかなくて。
だけど、しばらく経って落ち着いた後に、「あの時どんな気持ちだった?」って聞いたら、「今だから言えるけど、生まれた瞬間は本当に驚いて、まずアンちゃん(アンナさんの愛称)にリタの手を見せない方がいいんじゃないかと、瞬時に思った」と言っていました。
――学さんもすぐに受け止められたわけではなかったと。
アンナ 産まれてすぐ、私の両親に彼から電話してくれたらしいんですけど、泣きそうな声で何度も「こういう状況です。本当にすいません、すいません」と、ずっと謝っていたと、後から両親に聞きました。
リタの病院に付き添って行ったのは彼だったから、検査結果を待つ間もどんなに苦しかっただろうと思います。
――意識して、アンナさんの前では不安なそぶりを見せなかったんですね。
アンナ きっと彼も泣いただろうし、不安で心配でしかたなかっただろうけど、私のことを考えて、耐えてくれていたんでしょうね。
産後すぐに話してくれたことも、彼の中にある優しさを最大限、絞り出してくれた言葉だったんだと思います。
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