東京タワーの高さなんかに驚かない子どもたち 

 さて、この場所はいまどうなっているのだろうか。

 港区芝浦4丁目の再開発と共に2007年、2008年に竣工した「芝浦アイランド」というタワーマンション群が屹立しているのだ。

 この「芝浦アイランド」は、分譲棟2棟・賃貸棟2棟の計4棟の総戸数が約4000戸となり、入居者数は約1万名とされている。JR田町駅の芝浦口からすこし歩くとこの4棟が目に入ってくるが、それぞれの最上階が48階、49階と高くそびえるタワマン群は壮観である。驚くのは、同規模のタワマンがこの周辺に林立している点だ。

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 芝浦の認可保育園で園長を務めていた女性は、こんなエピソードを教えてくれた。

「保育園の遠足で、みんなで東京タワーまで歩いていったのですが、東京タワーの高さに感動しているのは園の職員だけで、子どもたちはまったく興味を示さないのです。子どもたちは高い建物、高いところからの風景はすっかり見慣れているのですよね」

 これらの東京湾岸エリアのタワマン群が誕生した当時は、数年内に第一子を授かろうという家庭がかなり多く入居してきたようだ。

同じタワマンに住む母親たちのつながり

 当然のことではあるが、タワマンには「昔から代々そこで暮らしている住民」はいない。最近は在日華僑がタワマンの部屋をこぞって新規購入していると言われているが、竣工した当初はそうではなかった。17~18年前くらいに日本各地からこのエリアに移り住んだ人たち、特にファミリー層中心で構成されていたようだ。

 そこで、港区は子育て支援の一環として乳幼児を持つ母親を「つなげる」試みをおこなっている。その一つが「うさちゃんくらぶ」である。

 これは、港区が生後2~3か月の子を持つ保護者たちを保健所の多目的室に集めるという取り組みだ。これに参加したある母親は証言する。

「この地域は、国内のあちらこちらから転居してきた家庭が集まっているので、以前から顔見知りという方はほとんどいません。ですから、保護者、とりわけ乳幼児を持つ母親が友だちを作るのは難しい。それならばと、区が同じ月齢の子を持つ親を一つの会場に集め、それも住所が近い人ごとに席が近くなるように配席し、そこで連絡先を交換する機会を持たせるのです」

 そのため、同じタワマンに住む母親たちがわが子の生まれた直後からその人間関係を構築するのは自然なことであると言う。