イメージとは正反対、タワマンは交流が活発
また、港区の湾岸地域のタワマンを居住地として選択する家庭の多くが「共働き世帯」である。聞けば、丸の内までタクシーを飛ばせばあっという間のところに位置しているし、タワマンの敷地内にスーパーがあり、また近隣に民間学童施設なども多く、日常生活や子育てにも便利であることから、ダブルインカムの家庭がこの地域のそんな特性を好んで選択したのではないかと言う。
加えて、このエリアの保護者たちの関係性をさらに濃厚なものにするのは、保育園の存在だという。タワマン在住の母親はこんなことを教えてくれた。
「うさちゃんくらぶからのつながりもそうですが、保育園の6年間の保護者同士の結びつきが大変強固でした。たとえば、乳幼児なんて互いのヘルプなしではなかなか育てられません。そして、子どもたちはみんな同じ小学校へと通うことになります。また、タワマンの特質として、共有スペース、たとえばパーティールームなどが充実していて、先ほどのつながりを軸にして、しょっちゅう家族同士で集まっています」
そう。都心部のタワマンというと人間関係が希薄化しているのではないかという先入観を抱く人たちが多いと思うが、話は正反対なのだ。
かつて、タワマンに入居するある女性と話していたときに冗談っぽく、「タワマンって世間のイメージとは全然違いますね。『縦に伸びている長屋』だと思ってください。内部の住人同士の交流は活発で、噂話なんて一気に広まりますよ」と言われた。
たとえば、コロナ禍で学校が休校を強いられているときなどは、「当番制」で互いの子どもたちをそのご家庭で預かることもあったという。
いまの日本に失われつつある「共同体」が、最先端の街で息を吹き返しているのだ。
タワマン・コミュニティーに属せない人たちは…
しかしながら、このタワマン独特のこういうコミュニティに属すことができないと、途端に「孤立」するリスクが高くなるという。たとえば、わが子がすこし大きくなってからこのエリアに転居してきたとしても、先ほどの自治体の取り組みにも縁がなければ、保育園内での親たちのネットワークと接続できないのである。
一棟のタワマンに数百~数千戸が入居しているが、その堅牢な構造のせいで、互いの生活音などまったく聞こえない。さらに、どこで何をしているのかが可視化されづらい環境ゆえ、人間関係の基盤が早期に構築できないと、まったくの「他人」になるのだという。
東京湾岸地域にある一棟のタワマンの自治会の運営に携わる男性は語る。
「わたしのマンションでも子育て世代の中には孤立している人たちが確かにいます。そこで、自治会がその人たちにどうアプローチをするかということを結構考えて、いろいろな試みを講じてきました。でも、そういう人たちにとって、良かれと用意した場が何だか面倒くさい、鬱陶しいもののように捉えられる傾向が強かったなんてことがありました。ですから、なかなか上手くいかない。この点は難しいですよね」
