そうとは限らない。なぜなら、わが子の中学受験に言い知れぬ不安や焦りを抱いてしまうということは、換言すれば、わが子に目が向いている証拠だからだ。自身の過熱ぶりに気づいたら、それを都度冷ましてやればよいだけである。そのために、わが子の中学受験を「アウトソーシング」している進学塾の講師に相談に乗ってもらうのは有効である。
一方、わが子の中学受験をきっかけに親が子に暴力を振るったり、家族関係が崩壊したり……などという事例がメディアの記事などでセンセーショナルに取り上げられることがある。もしそれが事実であれば、もちろん言語道断である。こうなってしまうと、もはや教育虐待に該当すると断じてよい。
進学塾で感じたネオ・ネグレクト
わたしが中学受験に関わる親と接していて困るのは、わが子を直視していない親、「アウトソーシング」が「丸投げ」と同義になってしまっている親への対応だ。つまり、ネオ・ネグレクトに手を染めてしまっている状態の親に対して、どう導いていくべきか苦慮してしまうのである。
序章で紹介したわが子の受験校についての親と塾との話し合いの場で、「わたし、考えるのが面倒くさいから、先生が全部決めてくださいよ」と言い放った母親は、まさにこのケースに相当するといえるだろう。
わたしの経営する中学受験塾に子を通わせる保護者の事例は紹介できないが、わたしの塾に問い合わせてきた親(実際に通ってはいないご家庭)について、わたしの見聞きした事例を四つほど紹介したい。
一つ目はこんな話だ。
わたしの塾(スタジオキャンパス自由が丘校・三田校)の特色の一つとして「自習室」を完備していることが挙げられる。塾の授業のない日であっても、月曜日~土曜日に常時開放し、そこで自学自習ができるようにしている。近年、共働きのご家庭が急増していて、親がわが子の学習に付き添いたくても、それが叶わない……それならば、わが子が塾の自習室を活用してもらい、質問があればその都度チューターや講師で対応しようと考えたのである。また、親子の距離が近すぎると、親がわが子の学習面にタッチしようとすることで、軋轢が生じてしまうケースがよく見られる。「自習室」はこういう事態を回避するための仕掛けでもある。
