比較的最近の話だが、わたしの塾に問い合わせてきた親がいた。どうしてこの塾が気になったのかという点を尋ねると、「自習室がある塾だから……」と繰り返すばかり。塾の教材やカリキュラム、授業日程などの質問はまったくしてこない。その親と話しているうちに気づいたのは、子の家庭学習を塾に託したい、換言すれば、丸投げしたい……それによって、親としてその負担をなくしたいという要望が先行していることだ。乱暴に言えば、わが子の今後の成績がどうなるのかは大した問題ではない。とにかくわが子を塾に預けっ放しにしたいということである。

進学塾を掛け持ちさせたい親の真意

 二つ目の事例を紹介しよう。

 第一章で、タワマン密集エリアの小学校の校門外では、学校帰りを待ち受ける民間学童施設をはじめとした、さまざまな教育機関がマイクロバスやバンを待機させているという話をした。それらに乗り込む子どもたちはまさに「分刻み」のスケジュールで日ごと数多くの習い事が入っている。

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 そういう習い事の一つとして進学塾を選定する親がとみに増えてきたように感じるのだ。そして、かつては決して耳にしなかったこんな「要望」が、問い合わせてきた親から発せられることが多くなってきた。

「わが子には複数の進学塾を掛け持ちさせようと思っています」

 わたしは即座に否定する。子どもたちが塾の授業がない日は、彼ら彼女らが宿題に取り組むという前提で、こちらもカリキュラムを構築しているのだ。別の塾を掛け持ちしたら、日々の学習が途端に回らなくなるのは当然だし、それによって子どもが勉強そのものを苦痛に感じてしまうようになるのは間違いない。

 ただ、その手の親にこういう理屈を丁寧に説明しても、「じゃあ、ほかの塾を当たります」とすぐに電話を切られてしまうのが関の山だ。この点、先ほどの「自習室」を連呼する親とよく似た動機が感じられる。

 とにかくわが子に自宅外で日々過ごしてほしいのである。両親共働きで、平日はわが子と顔を合わす時間などほとんど取れないということであれば、こういう考えに至るのはまだ理解はできる。でも、わたしの経験した限りではあるが、こうした要望を口にする保護者の中には専業主婦の母親も含まれている。これには驚いた。子どもと過ごす時間それ自体が苦痛に感じられるのだろうか、あるいは、子育てから解放される時間を設けて、自分の趣味に興じたいなどと考えているのだろうか……。

我が子が邪魔だから寮制の学校に?

 三つ目は、問い合わせをしてきた親、中でも小学校高学年の児童の親と面談すると、「現時点でのわが子の志望校」を表明される場合がままある。そんなときに、寮制度の設けられている地方の私立中高一貫校ばかりを志望するというケースに遭遇することが最近増えてきたのである。