みなさんにも田中さんのような経験はありませんか? 良かれと思って先回りしているのに、気づけば自分ばかりが忙しく、部下が育っていないという状況です。

心配性上司が陥る「不安の悪循環」

ここで活用いただきたいのが「認知行動療法」の考え方です。

田中さんのケースを分析すると、「不安の悪循環」に陥っていることがわかります。認知行動療法の研究では、不安というのは、それを取り払おうとして一時的な対処(安全行動)をすると、余計に持続してしまうことがわかっています。

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「安全行動(Safety Behavior)」とは、不安や恐怖を感じる状況において、その不安を軽減したり、恐れている最悪の事態を防いだりするために行う行為のことです。田中さんの場合、「仕事がうまくいかないかもしれない」という不安を打ち消すために行っている以下の行動が「安全行動」にあたります。

過度な先回り指示:締め切りのはるか前に完成させることを部下に求める。
マイクロマネジメント:部下の行動を逐一監視する。
権限委譲の拒否:何でも自分で全てチェックし、修正する。

これらの行動をとると、田中さんは一時的にホッとします。「よし、これでミスは防げた」「自分が管理しているから大丈夫だ」と安心感を得られるからです。これが、この行動をやめられない理由です。

「先回り」は弊害を生む

しかし、長期的にはマイナスに働きます。なぜなら、田中さんが先回りして介入してしまうことで、以下の2つの弊害が生まれるからです。

1.「最悪の事態は起きない」という学習ができない

常に自分が介入しているため、「自分が介入しなくても、部下はなんとかできるかもしれない」「多少のミスがあっても、リカバリーできるかもしれない」という現実を体験するチャンスが永遠に失われます。その結果、「私がいないと大変なことになる」という誤った信念(認知)が強化され続けます。

2.部下の成長機会を奪う