森下 でも20代半ばからまた始めるって、すごくないか。10代前半の少年ならともかく、トップ棋士の一人がやるというのは。
増田 これをやったら勝てると思わないとできないですね。それに2021年頃、僕はB級2組でしたが本当に並の棋士でしたし、それをやらなかったら全然今に至れていなかった気がします。
長期型と短期型
森下 19歳から20歳になる頃、将棋に勝つことだけがすべてだと思っていました。順位戦で上がれなくて、なんで俺がC級2組なんだと。他の棋戦で勝ちまくっていたので、はっきり言ってA級よりも自分の方が全然強いと思っていたわけです。その怒りが抑えても、抑えても止まらなかった。
増田 先生は怒りをバネに勝てたんですね。僕の場合は怒りだけではなんとかならなかったんですよ。
森下 許せんという気持ちがすごくて、将棋の勉強しかしていないわけだから。
増田 僕はやる気だけでは勝てなかったんです。結局、自分の場合はトレーニングの理論がしっかり組み込まれていないと結果を出せないタイプだったので、がむしゃらにやってもあまり結果が出なかったんです。
森下 私はどれだけ量をこなして、密度が濃いことがすべてだと思っていました。奨励会時代は午前3時に起きて水をかぶり、将棋の勉強に打ち込みました。プロになってからは19歳からの5年間、常に集中、集中と自分に言い聞かせていた。それが20代後半くらいから、いくら集中しようとしても上の空になっている自分に気がついて。
増田 確かにそのやり方は継続性が難しいですよね。
森下 本当に短期決戦のやり方でした。今でも頭重感というか、漬物石が頭に乗っている感覚があって、お医者さんにその時に脳や身体を酷使し過ぎた後遺症じゃないですかと言われました。血流が悪くなったらしいんですね。
増田 僕は逆に先生のように短期集中型の勉強はできないです。それでは結果が出せない。20歳くらいの時に一生懸命にやっても、タイトル挑戦とか全然いかなかった。一方で、棋士になってすぐに結果を出す方もいらっしゃるじゃないですか。
森下 確かに郷田(真隆)さんもそうだし、(弟弟子の)深浦(康市)も新四段で全日本プロトーナメントを優勝したりしました。
増田 多分僕は長期型の取り組みタイプだと思うんです。周りからは情熱があるようには見えないと思いますけども。



