「僕がカメラマンになればいい」
樹水の写真は数多く見てきた。絵心、アートへの関心も子どもの頃から持っていたので、構図にも明るかった。そこに心配はない。もう一つ、決め手になることがあった。デジタルカメラの普及だった。
「インターネットが普及して、カメラもデジタルが一般的になっていた。これが大きかったですね。その場で確認できるわけですから。昔のフィルムカメラだったら、僕はカメラマンにはなっていなかったと思います」
東京メトロ・日比谷線入谷駅から徒歩約3分の雑居ビルの一室が、酒井のホームグラウンド「スタジオMe‐CELL」だ。約70平方メートルの一室。多くの個人スタジオは、マンションの一室をリフォームして撮影できるようにしている。酒井のスタジオもそうだ。
独特な表現で語る“撮影のコツ”
酒井はキヤノンEOS 60Dを購入し、一からカメラを勉強した。風俗カメラマンの要諦の一つは、ヒアリングにあると言って過言ではない。酒井に限らず皆、撮影前のヒアリングの重要性を語っている。自分はどう売り出したいのか。逆に、コンプレックスを感じているのはどこか。
他愛のない話から風俗嬢との距離を詰め、リラックスさせて撮影に臨む。
そのコツを酒井は独特な表現で語る。
「美容師が髪を切る時と同じだと思っているんですよ。どんなに評判が良くても、しゃべり方や髪の触り方が合わなかったら、女性は嫌な気分になるでしょう? そうならないように、信頼してもらえるように距離感を詰め、その人の本質が垣間見える写真を撮る。それが鳴る(指名される)写真だと思っています」
酒井もそうやって現場の数をこなし、現在の地位を築いていった。現在はキヤノンEOS1DX MarkⅢをメイン機として使用している。
風俗嬢の写真撮影は大きく分けて「パネル用」「SNS用」になるという。
パネル用は、店舗で客に見せる写真だ。喫茶店やレストランで見せるメニュー写真と言えば分かりやすいだろうか。現在も店舗ではパネル写真を用意してある。風俗サイトに掲載されている写真も同様である。
一方、SNS用は、風俗嬢が風俗サイトに掲載する写メ日記やXに掲載するための写真。客が事前に風俗嬢のことを知りたいと思うと、サイトやXなどのSNSで検索し、その人となりや表情などを調べる。そこに載せるための写真である。
