河﨑 牛のほうが野生のシカよりも脂がのっていて、栄養価も高いですし、味を覚えてしまうと牛を襲うようになるでしょうね。

藤本 OSOはもともとシカをたくさん食べていたクマだと考えられるので、肉に対する執着心が強かったのではないかと思います。

河﨑 不法投棄の他にも、鉄道や車の事故で死んだシカが放置されると、それを目当てにクマが出てきてしまいますね。最近は山から下りて市街地周辺に出没する「アーバンベア」の報道もよく目にするようになりました。昨年も、札幌市の公園で人がヒグマに襲われた事件がありました。

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札幌市内の茂みにヒグマが隠れていた ©時事通信社

藤本 確かに札幌でもヒグマが出没して被害が出ています。でも、たとえば秋田市のスーパーにクマが55時間も居座ったという事件は、ヒグマでは起きないですよね。市街地では特に秋田県や岩手県の被害が多いですが、本州にいるのはツキノワグマです。ツキノワグマは人に対する恐怖心がヒグマほど強くなく、むしろ好奇心が強い。ヒグマは非常に神経質なので、人がたくさんいるところにはあまり出てこないんです。

 札幌は地形的な問題があって、民家のすぐ裏が山になっているんです。これは羅臼と同じような地形で、昔から「札幌は羅臼と同じだ」とよく言っていたのですが、昨年はまさにその通りになってしまいました。

河﨑 そういえば5年ほど前、羅臼で犬が襲われたことがありましたよね。あの時、犬を外で飼うからそんなことになるんだという意見をSNSで見かけました。でも、田舎の感覚でいうと、そういうことではないと思うんです。番犬として、野生動物への警戒も含めて役割を与えて飼っているわけですから。

藤本 番犬ですから、外で繋いで飼うのは当たり前ですよね。人と共存し、人の役に立ってくれる犬として飼っているのであって、それはたとえば猟犬も同じです。

河﨑 家の中で飼うのもいいし、外にいてもらって人間の暮らしを守ってもらうのも一つの在り方だと思います。犬の飼い方しかり、クマとの付き合い方しかり、現場でないとわからないことはあると思います。

 クマをどういう基準で捕獲するかも、現場や状況によって違ってくるところがあると思うのですが、そのあたり、感じていらっしゃることはありますか?

藤本 人が優先というのが基本です。クマを山に追い返してもまた戻ってきてしまうわけですよね。どこの事例を見てもほぼそうです。そうなってしまったクマは、やはり捕獲せざるを得ないと思っています。

河﨑 人命第一というのが大前提で、そこは揺らがないですよね。小説の中でも、そこは大事にしたかったところです。

正しく知ったうえでどう棲み分けるか

藤本 しかも、街に出てきてしまうと猟銃を使用するのにいろんな制約が出てきて捕獲が難しくなってしまうので、その前の段階で処理しなければダメだというのが僕らの鉄則です。人間の生活に支障が出るかどうか。そこが判断基準の一つで、それはクマが可哀想とか、そういうこと以前の問題です。

河﨑 昨年、『クマ外傷』(中永士師明編著・新興医学出版社)という本を購入したのですが、クマに襲われて受けた傷の症例が写真で掲載されていて、クマの恐ろしさがとてもよくわかりました。