「命に別状はない」クマ外傷の壮絶さ

藤本 昨年も、クマによる被害を受けた方はかなりの数にのぼっています。クマに襲われて受けた傷って、本当に大変なんです。よく報道で「命に別状はない」という言い方をしますよね。でも、命に別状がない場合でもひどい怪我を負って、日常生活に支障をきたす場合は多いんです。

河﨑 怪我の治療も大変ですが、精神的な被害もあるようですね。

藤本 クマは立ち上がって相手を威嚇し、その姿勢で平手で襲ってくるので、顔が狙われるんです。爪が私の指くらいの大きさがありますから、それで襲われたらひとたまりもありません。河﨑さんの『ともぐい』でも、クマに襲われた男が、顔の骨が砕かれ、目がえぐられているという描写がありますが、まさにそうなんです。クマによる外傷というのは壮絶です。でもこれも、報道だと「命に別状はない」ということになってしまう。

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河﨑 再建治療の技術が高いことに驚きましたが、やはりメンタルと外傷はそう簡単には治りませんものね。

藤本 いま必要なことは、まずクマを知ることだと思います。何を食べていて、どの時期にどこにいるのか。私もクマについて各地で講演する機会が多いのですが、クマのことをきちんと知っている人は1%くらいだと思います。

駆除したヒグマと藤本氏

河﨑 地域差もありますし、個体差もある。その振り幅も含めて理解するのは簡単なことではありませんが、とても大事なことですね。

藤本 そして、きちんと知ったうえで、“正しく怖がる”ことが必要だと思います。そのためには、クマに関するノンフィクションや、河﨑さんが書かれているような小説も有効ですよね。全てのクマが怖いわけではないんです。クマは愛玩動物ではなく野生動物ですから、正しく知ったうえで、どう棲み分け、共存するか。これを考えることが大切だと思います。

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